世界的ベストセラー『サピエンス全史』について紹介したNHK「クローズアップ現代」を見た。

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こんにちは。さるぼぼ母です。

1月4日(水)に放送されたNHKクローズアップ現代『“幸福”を探して 人類250万年の旅 〜リーダーたちも注目!世界的ベストセラー〜』を見ました。これは今、世界的ベストセラーになっているイスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリという人が書いた歴史書です。全世界で200万部を超えるベストセラーとなっている本で、世界中の著名な識者やビジネスリーダー、政治家、研究者たちが注目している本ということで、番組ではこの本のどこがすごいのか、という視点から、これらを絶賛している著名人と著者へのインタビューによって構成されていました。

この本の特徴は人類の250万年の歴史を今までにない切り口で語ってるところだといいます。この本に注目している人の中には、アメリカのオバマ現大統領、マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏、FBのCEOであるザッカバーグ氏、ピケティの「21世紀の資本」の翻訳者として知られる山形浩生氏ほか多くの方が「未来を生きるヒントが詰まっている」としています。

何がどう今までの歴史書と違うのか。

今までの歴史書は、歴史上の中心人物や国家や権力を中心に書かれているものがほとんどですが、本書が一番違うのは、「個人の幸福」に目を向けて書いてきた、とハラリさんは言っています。確かに、そういった「人類一般の民=私たち」の幸福を語る歴史書というのは聞いたことがありません。

また、本書の一番の特徴といえるのは、人類が発展してきたのは人類が「フィクションを信じる力」を持っているから、としています。

ホモ・サピエンスが出現したとき、地球上ではネアンデルタール人の方が力を持っていたとされています。しかし、ネアンデルタール人は「見えるもの=実際に存在するもの」だけを信じ、それしか言葉として伝えられなかったのに対し、ホモ・サピエンスは「神」のような「目に見えず実在しないもの=フィクション」を信じることができ、それを言葉として伝えられたため、集団として大きな力を持つことができた、とされています。

結果、ネアンデルタール人は滅び、集団として大きな力を持つようになったホモ・サピエンス=人類の祖先が繁栄することになった、というのです。つまり、「フィクションを信じる力」が人類繁栄の鍵である、とハラリさんは言います。

人類史上の4つの革命

この中で人類史上の革命には4つがあるとされています。

・認知革命 虚構=フィクションの「言語」が出現する
・農耕革命 植物の栽培と家畜による食料の確保。貨幣、多神教の出現
・科学革命 資本主義の台頭
・産業革命 国家と市場に変わる社会(家族とコミュニティ)の出現

気がつくと、これらすべての革命の中でなにかしらの「フィクション」が出現し、人類に大きな影響を与えています。人類はフィクション「言語」「貨幣」「宗教」「資本主義」「社会」などによって進化している、というわけです。

フィクションを信じることで人類は幸せになるのか。

「農耕革命」以前の人類(ネアンデルタール人)は、狩猟をして生活を営んでいました。つまり、自らが取得した富を自分で消費していたのですが、「農耕革命」以後、集団で取得した富を分配することで発展したといいます。ですが、狩猟で生活を営んでいた時代より、分配で得られる一人あたりの富はずっと少なくなっているといいます。つまり、それ以前より貧しくなっている、というのです。これを「人類最大の詐欺」としています。

では現代はどうかというと、資本主義の台頭によって、人類は経済成長というフィクションを信じている、としています。経済発展とグローバル化が個人を幸せにしているか?というのです。実際、資本主義は限界に達しており、経済は停滞し続けていると言われます。世界は経済を元に戻せば格差や貧困、対立を解消できると信じていますが、実際にはうまく進んでいるとはいえないでしょう。

資本主義の限界。新たなフィクションの必要性。

現在の世界は新たなフィクションを必要としている、と著者は言っています。そのフィクションは何なのでしょう。
その鍵は、おそらく人工知能やバイオテクノロジーといった科学技術の進歩にある、と番組の中では示唆しています。

やはり、人工知能なのですね。

2016年は人工知能の話題が本当に多く取り上げられました。
つい先日の年末年始に次々に世界中のトップ棋士を打ち負かしたネット上のハンドルネーム「Master」とされる棋士が、実はGoogle社のAI棋士「アルファ碁」の進化版だった、というのが話題になりました。

また、富国生命が生命保険の査定に人工知能を導入し、関連部署の従業員がリストラされるというニュースが流れたばかりです。

また、死後の人間がネット上に人工知能として生き残り、生きた家族と会話(チャット)して永遠に生き続ける、という映画のような話が現実となってきています。

ハラリさんは言います。近い将来、人類は科学の力によって、姿を変えるだろう、と。そして、科学の力を想像することを共有すること、そして、自分の欲望をコントロールすることが人類の未来の鍵である、と。


シンギュラリティを人類の破滅とするのか、再生とするのかは、私たち次第。

人工知能を語る上で「シンギュラリティ=技術的特異点」は外すことのできない問題になってきています。少し前までシンギュラリティは映画「2001年宇宙の旅」や「ターミネーター」の中の出来事でしかありませんでしたが、これについて多くの識者や学者が言及するようになっています。

その多くは楽観的なものもありますが、否定的なものも多いようです。以前の日記でも書いたのですが、人工知能はアルファ碁の棋士に代表されるように、何気なく、知らないうちに私たちに忍び寄っています。

また、多くの世界的トップ企業が人工知能の開発に力を入れることを表明しています。今後、企業が連携して人工知能の開発と人類の未来を熟慮しながら進めることができればいいのでしょうが、残念ながら、そんな連携が実現するような気がしません。

ハラリさんが言ってるように「自分の欲望をコントロールすることが人類の未来の鍵」であることは間違いないように思います。資本主義(という宗教)や人工知能というフィクションが人類を幸せにするのか、さらに不幸にしていくのか、非常に考えさせられる番組でした。

(書籍もさっそく読んでみたいと思います。読まないで書いててすみません^^;)

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