ベストセラー!話題の本「沈黙のWebライティング —Webマーケッター ボーンの激闘—」の紹介と感想を書いてみた。

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こんにちは。さるぼぼ母です。

Amazonでベストセラーになっている「沈黙のWebライティング —Webマーケッター ボーンの激闘—」という書籍を買って読んでみたので、その内容と感想を紹介したいと思います。


本書は今もAmazonでは総合365位(1月28日現在)、「 Webデザイン」「 e-コマース」「広告・宣伝」カテゴリでも1位になっています。ネットでもだいぶ話題になっていますね。発売された当初は、たしかAmazonで1位になっていたように記憶しています。こういう本が1位になるってのが意外ではあり、その後もいろんなところで取り上げられていたので、今回読んでみることにしました。

この本の一番変わっているところは、普通の「Webライティング」や「SEO」の本と違ってボーン・片桐という破天荒なキャラクターが主人公になっている、漫画仕立てというか、台詞とイラストで進んでいくという形式の書籍です。とにかく書籍のストーリーも面白いので、ざっと以下にあらすじを紹介していきたいと思います。

「沈黙のWebライティング」のあらすじ。

須原の古い旅館「みやび屋」は経営の危機に瀕していた。女女将のサツキは半年前に両親を交通事故で亡くし、ひとりで宿を切り盛りしていたが、そこに元ミュージシャンの弟ムツミが帰ってくる。

今日もみやび屋のWebサイトからは一件しか予約が入らない。そこに「最強のWebマーケッター」を名乗るボーン・片桐と彼のパートナーであるヴェロニカが現れる。ボーンは探しているチップから発信される信号がこのみやび屋から出ていることを知り、この旅館にヴェロニカとやってきたのだ。

旅館が経営の危機に瀕しているのはWebサイトから入る予約がほとんどないことが原因だということがわかった二人は、みやび屋のWebサイトをWebライティングの力で改善し、旅館を復活させる。

みやび屋のWebサイトへの集客が発覚すると、ボーンの宿敵である遠藤(本書の前作である「沈黙のWebマーケティング」に登場)と、みやび屋を潰してサツキを自分のものにしようとしていた中国人実業家のヤンは、さらに巨大な力を持つ旅行情報を提供するキュレーションサイトに須原の情報が一切表示されないようにする。

どこにもWebで上位表示されない須原全体の観光客が減り、一帯の旅館も閉鎖の危機に見舞われる。ボーンはみやび屋の二人に「オウンドメディア」を立ち上げ、須原全体の底上げをすることを提案する。

資本の力で須原とみやび屋を潰そうとする遠藤に対抗し、ボーンと弟子のWebディレクターである高橋は、バズボンバーという強力なコンテンツメーカーであるライター集団の力を借りて、遠藤たちが行った「検索上位表示から須原の全ての情報を排除するという悪行」を暴露するという荒業に出た。

バズボンバーが放った暴露コンテンツは共感を呼び、SNSやブログなどでWeb上で影響力のあるコンテンツメーカーたちによって拡散された。結果、みやび屋のオウンドメディアは上位表示され、須原全体に観光客が戻ってきた。須原の危機は回避されたのである。

怒ったヤンは遠藤を解雇し、ボーンを消そうと殺し屋をけしかける。ボーンはヤンの事務所に乗り込み、殺し屋と対決して勝利を収める。その後、ボーンが探していたチップもムツミが使っていたイフェクターの中で見つかり、ボーンに隠された秘密が暴かれることとなった。ボーンの秘密とはいったい....
(シーズン3に続く?)

破天荒な主人公「ボーン・片桐」がWebライティングで悪に対抗する具体的かつ実践的な内容。

とにかくストーリーもですが、ボーン・片桐のキャラクター設定が破天荒すぎます。「最強のWebマーケッター」であるボーンが仕事に使っているノートパソコンは、セキュリティ対策でなんと39.9kgあるのです。

また、二人にWebライティングを教えるときに「エモーショナルライティング」という手法で文章に感情を入れながらライティングを行うのですが、目にも留まらぬ速さでタイピングを行い、一瞬のうちにSEOに特化した文章を仕上げていきます。まあ、漫画ですよね^^;
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エモーショナルライティングをするボーン

正直、こういったタイプの本は私もあまり馴染みがないため、最初はボーンの破天荒なキャラ設定や、漫画仕立てのストーリーに若干抵抗がありましたが、読み進めていくうちに、ストーリーの中で設定されている具体的な事例や、それを改善するための具体的な解説が、とても的確かつわかりやすく、頭に入ってきやすいので驚きました。

ただ、本書は本編の会話形式のストーリーに大半のページが割かれているために600ページもあって(分厚い!)、手っ取り早くWebライティングの核心を学びたい人にとってはまだろっこしい感じもするかもしれません。

しかし、これらのストーリーの中で出てくる一つ一つの事例が実例だったら、細かい事情は説明できないでしょうが、架空の設定ながら、実際によくあるだろう典型的な問題を適切にあぶり出しているため、単にNGな文章をこうしたらOKな文章になりました、といった一部を抜き出したような解説に留まらない、無駄がなく、かつ全体のコンテキストの中で論理的に理解できるWebライティングを学ぶことができるのです。

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単なるライティング本に留まらないSEO全般について学べる。

本書は「Webライティング」というタイトルから、文章術に特化した本だと思われる方が多いかと思いますが、文章の良し悪しというよりは、SEO全般についても無理なく理解できる書籍になっています。

Googleの検索エンジンの仕組みからはじまり、なぜ上位表示されるのか、といった基本的な事項から、現在の検索エンジンが評価するコンテンツとはどういうものなのか、そのために必要なコンテンツたる文章とはテキストライティングとはどういうものであるべきか、という本質的な問と答えを、ストーリーの登場人物たちに語らせ、解答を提示しているのです。

また、SEO全般の基本的な話から、サイトのUSP(Unique Selling Proposition)の必要性、文章の読みやすさを左右する「改行」「箇条書き」「リズム」「漢字のひらき」「文字のサイズや色」「画像やイラストの挿入」「論理性」などといったテキストライティングに関する具体的なハウツーポイントを裏付けとなる技術や理論などを援用しながら解説することで、読者にとっても無理なく納得できるようになっています。

これらの技術的、具体的ハウツーが「ヴェロニカ先生の特別講義」としてストーリーの各章末に挿入されているので、漫画的ストーリーだけに留まらない、実践的な書籍として十分活用可能です。

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ヴェロニカ先生の特別講義

ちなみに本書で具体的に解説している内容を挙げてみると
  • マインドマッピング(実際のマインドマップはデータがダウンロード可能)>
  • Googleの品質ガイドライン
  • キーワードプランナー
  • 選択のパラドックス(「選択の科学」より)
  • USP
  • エモーショナルライティング(ダニエル・カーネマン「ファースト&スロー」)
  • システム1・システム2の思考
  • わかりやすい文章を書くためのポイント
  1. 感情表現
  2. 改行
  3. 漢字とひらがなの割合と漢字のひらき
  4. 「こそあど」言葉を使わない
  5. 要点の箇条書き
  6. 文章の長さ
  7. 文字の色
  8. サイトデザイン
  9. イラストや画像
  • 論理的思考とターゲット
  • 表現の粒度と信頼性
  • 検索されるコンテンツの本質とは
  • オウンドメディアとSEO
  • タイトル
  • SEOにおけるリンクの重要性
  • キュレーションメディアとの付き合い方
  • 取材の実際、ノウハウと手順
  • バズらせるコンテンツ制作の実際
  • SNSでの拡散につながるコンテンツとは
など、本当に細かいコンテンツ制作についての解説がなされているのです。

漫画的なストーリーだけでは実践的・具体的になってないのでは? と心配するかたも多いかと思いますが、これをご覧いただくとおわかりになるかと思いますが、十分以上に内容が詰まってると思います。正直ストーリーから解説まで、頭に入りやすいだけでなく、信頼性に足るコンテンツとなっているところは、正にこの本が言っている「Webライティング」の本質と合致するのではないでしょうか。

キュレーションサイトの未来を予測した?

本書で一番驚いたのは、後半でボーンの宿敵である遠藤が莫大な資本で投下したコンテンツで運営するキュレーションサイトが、須原の情報を上位表示させないように不正な操作を行う一連のエピソードです。

これって正に先日の「WELQ」の閉鎖から派生した一連のキュレーションサイト問題の核心に近いです。

この「沈黙のWebライティング」の中でもキュレーションサイトの問題として
  • 資本にものを言わせる大量のコンテンツ投下による検索上位表示の操作
  • 「引用」や「キュレート」という手法を隠れ蓑にした、コンテンツ盗用・著作権違反の現状
を摘発したものになっています。遠藤がやったキュレーションサイトによる検索上位表示の操作や、コンテンツ盗用や著作権違反によって上位表示することによって、Googleの推奨する「検索する人にとって有用なコンテンツ」を逆手にとって悪用する「ブラックな手法」についての警鐘を鳴らしています。

本書が発売されたのは2016年の11月ですから、例のキュレーションサイトの炎上騒動よりも1ヶ月以上も前のこと。あたかもWELQを閉鎖に追い込んだライター集団とは、バズボンバーだったような気さえするわけです。いかに本書の内容が「今」のWeb業界の現実に即しているということがわかる一例です。

SEOをご存知の方はおわかりになるかと思いますが、日々刻々と変化しているため、昨年度通用していた常識が今ではまったく通用しないどころか、ペナルティの対象にさえなってしまう状況の中で、本書の解説している内容はまさに「今」の検索エンジンが目指す正しいコンテンツ制作のあり方を示しているように思えます。

SEOやWebのコンサルティングを生業としている専門家にとっては、高度なツールの使い方や分析方法、PDCAの具体的な回し方といったところまでは書かれていないですので、物足りないかもしれませんが、アフィリエイトをしたいと考えている個人の方や、Webでオウンドメディアを立ち上げたいと考えている小規模サイトのオーナーの方にとっては十分参考になる内容と言って間違いないと思います。

CPIサーバーとのWeb広告タイアップ連載をまとめた一冊。

この本は元があって、すでにWeb上でおおよその内容が読めるようになっているようで、本シリーズはKDDIのCPIサーバーと著者であるWebライダーさんの広告コラボ企画の連載が一冊にまとめられたようです。

CPIサーバーとのコラボページはこちらです。

本書「沈黙のWebライティング —Webマーケッター ボーンの激闘—」の連載ページはストーリーの全容はこちらでほぼ同じものが読めるようですが、よく見ると紙版で各章末についている「ヴェロニカ先生の特別講義」はWeb版にはついておらず、紙版のための特別編集された内容となっているようです。

また、前作も含めて本書はCPIサーバーとのコラボ企画のため、前作の「沈黙のWebライティングーWebマーケッターボーンの逆襲ー」も特設ページとなっており、おおよそのストーリーがこちらで読むことができます。
そして、書籍も同様にAmazonで購入することができます。こちらも大きく話題になったようですね。

Web版でボーンのストーリーを読んでみて、さらに詳しい具体的な施策について知りたい方は紙版を買い求めてみてはいかがでしょうか。

なお、紙版には特典として本書の特設サイトからはさまざまなデータがダウンロードできるようです。

  • マインドマップ制作につかえるX-mind
  • 実際のストーリーの中でボーンが作ったマインドマップ数種
  • 書籍の中で紹介している便利サイトやサービス・情報ページ
  • 参考書籍紹介ページ
  • 最後にムツミが作ったテーマソング(近日配信予定)
  • 著者のセミナー情報

などなど
ちなみに今回は「沈黙のWebライティング」が気になったので読んでみることにしましたが、前作となる「沈黙のWebマーケティング」の内容も気になりました。こちらもレビューを見てみると非常に充実した内容になっているようですので、今後後づけになりますが読んでみたいと考えています(概要はWebサイトで読めますね)。

本書の著者はあのWordPressテンプレート「賢威」の制作者。

本書の最後には「to be continued...」とあり、ボーンの秘密がいよいよ暴露される次回作が示唆されています。今後どういう展開になるのか、またどういったテーマで本書の続編が書かれるのか、非常に楽しみになってきました。

著者の松尾茂起さんはWebライダーという会社の代表で、SEOやアフィリエイトの業界では「賢威」というWordPressのSEO施策が施されたテンプレートの製作者として知られています。ここでは「賢威」の紹介をするページではないので、説明はしませんが、賢威の販売ページはこちらのようです。

「賢威」テンプレートの名前はいろいろなところでその高い評判を目にするところですが、そういった意味でも内容的にも信頼度の高い書籍と言えるのではないでしょうか。

SEOやWebライティングの本はたくさんあれども、本書はその敷居の低さといい、内容の充実度といい驚きの良書であり、SEOライティングでは間違いなくおすすめの一冊と言えると思います。

大変長くなりましたが、今日はこの辺で。
それでは、また。