夫を亡くした直後に離婚する「死後離婚」が話題になっているという。
(Yahoo! ニュースより)
「“死後離婚”というのが増えているらしいんですよ」
数年前に突然死で夫を亡くした会社の同僚のMさんがランチをしている時に語った。
「何それ?」
はじめて聞くその言葉に一瞬耳を疑った。なんで「死後」離婚なのか?と。今生で永遠の別れとなる「死」の後に離婚ってどういうこと?
聞けば、夫に先立たれた後に、夫の家族の面倒を見ることが経済的にも、心理的にもできないと考えている女性が夫の死をきっかけに、夫の家族と縁を切ることなのだ、という。
「旦那さんが死んだ後、義理の親の面倒見たくないからするらしいんですよ。年を取って体も動かない、経済的にも厳しくなって、いざ息子の嫁に頼ろうと思った時に、なんか世知辛いっていうか、ひどい話ですよね」と彼女はため息混じりに語った。
その話をしたのは数週間前。この記事を見たのが今日だ。そうか、これって話題になってるか。
30代半ばで夫を突然死で亡くしたMさん。
Mさんの夫が亡くなったのはもう5年以上も前。夫婦共に30代の時だった。朝起きたら隣で寝ていたはずの夫が息をしてなかったのだ。いわゆる突然死。
Mさんとは週に一度はランチを共にする。ランチでは会社や仕事についての話、もちろんプライベートな話もする。気丈な彼女が哀しみを外に出さずに頑張ってきたのを私はずっと見てきた。
きれいな人なので「再婚しないの?」と聞いたこともあるが、「もう懲り懲り」と浮いた話はそれ以来聞かない。
その代わり、というか亡くなった旦那さんの家族のことはよく口にする。関西の観光地で旅館を営む家を切り盛りするお義母さんとは、今でも仲良くしているらしい。何か問題があると彼女に相談の電話をよこすし、どうも勝手らしい義弟の嫁の愚痴も彼女は黙って聞いてあげるらしい。
Mさんは仕事上ではとても厳しい。自分にも他人にも厳しいが公平で、曲がったことが嫌い。相手が偉かろうが関係なく、自分の意見をきちんと通す。そんな激しい彼女のやさしい一面を私は好ましく感じている。
旦那さんが亡くなってもう5年以上経つ。お義母さんはいまだに彼女に田舎の名産品を送って寄越すらしいし、上京した際には案内をして回る。死後離婚なんてとても考えられない、という若い人もいるのだ。
「死後」でなくとも急増する働く女性の「離婚」
私は息子を育てながらフルタイムで働いてきたいわゆる「ワーキングマザー」だ。今はほとんど死語に近いのかもしれないが、息子を保育園に預けて働きはじめた当時は、ワーキングマザーは転職したての若い会社にはほとんどいなかった。
同じ働く母親仲間と繋がって、その苦労を分かち合いたいという思いでネットのコミュニティにはじめて参加した。それから付かず離れずでいろんな人との付き合いがもう20年近くも続いている。とにかく男性並み、いや男性以上に働く彼女たちには、今、離婚がとても増えている。経済的な自由を手にした女性たちにとって「離婚」は自由への扉なのだ。
先日も遠方から来た仲間を囲んで集まった8名ほどの母たちのうち、離婚経験者は半数を超えていた。その場で「結婚している人はここではマイノリティなのだから大人しくしていよう」と笑ったのを記憶している。
昨年義母を亡くしたある友人は、結婚してからずっと義母に苦しめられてきたという。老人ホームに入り、認知症で自分が嫁に放ったキツイ言葉も忘れていく義母をけなげに世話していたが、教育者でもあり、どこから見ても好人物な彼女が「義母が亡くなって本当にせいせいした」と語った時には仰天した。
さるぼぼ父の両親は早くに亡くなっているので、私は嫁姑の争いを知らない。「それは幸せね」とよく言われるがそういうものなのだろうか。
子供より他人に財産を残そうとした妹の元姑。
私の妹も早くに夫を癌で亡くしている。まだ姪が小学生に上る前、義弟は亡くなっている。その後妹は再婚したが、先日前の夫の姑が亡くなった。4人兄弟の末っ子だった前の夫を溺愛していたのもあるが、他人から見てもお世辞にも人間的に優れていると思えない姑は、事ある事にお金をちらつかせてまで、なぜか別の姓になってしまった姪と妹を繋ぎ止めようとした。他に自分の子供が3人もいるのに。
亡くなる直前も3人のうち2人は姑の病室を訪れなかったらしく、もうとっくに縁が薄くなったはずの姪と妹が行くたび、涙ながらに手を握ったらしい。それからしばらくしてから亡くなった姑は、自分の財産の一部を姪と妹に残した。お金に執着した姑と同じく強欲な兄弟2人はそれが気に入らず、財産分与についての争いが起ころうとしている。
自分の子供より孫、そして他人に財産を残したことに私は驚いた。酷いこともさんざん言われ、妹はよく泣いていたのに。
夫の家族よりも自分の時間、親しい他人を優先
「死後離婚」の理由とはこういうことらしい。
- 生前夫とうまくいっていなかったが、遺産と遺族年金を受け取るために夫が死ぬのを待っていた。
- 夫と仲は悪くはないが、夫の実家と折り合いが悪かった。
- 夫の死後、お墓の管理や親族の介護などをしたくない。
- 姻族との繋がりから自由になりたい。
結婚とは単に相手と一緒になることではない。相手の家族とも家族となることだ。昔は夫が死んだ後も義理の両親の面倒を死ぬまで見た、という話はよくあることだったように思う。
平均寿命も伸びて、自分も相手の家族との付き合いも長くなった。そして経済的にも精神的にも余裕がなくなりつつ今の世の中。お金の切れ目が縁の切れ目なのだろうか。
生き延びるために、自分の身を守るだけで必死だということなのだろうか。薄情だと言われても縁を切るのは“恥”ではないのだ。
私の周りの離婚した女性たちの多くは、家族と過ごすような季節の年間行事を家族と過ごすよりも友人同士で集って過ごすようになってきている。さまざまな家族のあり方があってもいいだろうが、人との繋がりも家族のあり方も大きく変わってきている。