
さるぼぼ母です。
『おんな城主 直虎』 第22回「虎と龍」のあらすじと感想をご紹介したいと思います。
*詳細なネタバレが含まれますのでご注意ください
◉龍雲丸たちを雇うことをなかなか納得しない中野直之と奥山六左衛門。しかし、最大の難関はやはり小野政次だった。
井伊の材木を売って商いをすることになった井伊直虎(柴崎コウ)は、龍雲丸(柳楽優弥)率いる盗賊の一味に材木の切り出しを頼むことになった。
こうして、直虎と龍雲丸の二人の奇妙な縁は再び結ばれ、龍雲丸たちは井伊にやって来たのだが....そうすんなりと事は運ばなかった。
「切り出しを請け負う者の中に一人、見たことがあるものがおるようですが。どこからどう見てもあれは打ち首になるはずの者ではないですか」
とぼける直虎に向かって、すごい剣幕で中野直之(矢本悠馬)は詰め寄った。
「もしかして、殿をさらったのはあの者たちですか?」とさらに直之は声を荒げた。
「とんでもない事!」と奥山六左衛門(田中美央)も声を上げた。
「何を考えているのですか!ならず者を引き入れて、何かあったらいかがなさるつもりですか?」という直之に
「まあいいではないか。あの者たちの木を斬る技は大したものではあるし。盗みもかどわかしもせぬ、と約束してくれたし」という直虎。
ああいった者たちの性根は治らない、と主張する直之の横で瀬戸方久(ムロツヨシ)はこう言った。
「荒くれ者を手なづけ、家来とする話もあるではないですか」
それを聞いた直虎は言った。
「そうじゃ。屈強な家来衆ができるかもしれんぞ!」という直虎に押し黙る二人。
「しかし、但馬殿(小野政次・高橋一生)がお認めになりますか。盗人は死罪にすべしと強く言っておられましたし」と六左衛門。
確かにそれが一番の難関だった。
◉龍雲丸を信用できない政次。そして政次に対して思うところのある龍雲丸。
直虎は、龍雲丸たちを寺の預かりにするよう南渓和尚(小林薫)に頼んでいた。
「寺の預かりということにすれば政次もうるさいことは言わないでしょうし」という直虎に対し
「男ぶりがいいからのぉ。目がいいからな。変わった考えの持ち主でもあるようだし。殿も大人であるからのぉ」と和尚。
意味深な和尚の言葉に直虎は慌てて言った。
「我は領主として役割を与えただけです。あの者たちを見方につけて悪いことはない」
そこまで考えているなら、小細工せずに政次にそのまま言えばよい、と和尚は言った。
政次に龍雲丸たちの事を相談した直虎に政次は言った。
「まずはその者たちを見てからです」
さっそく政次とともに龍雲丸たちが働く現場を見に行くことになった。
六左衛門とともに笑い合う彼らの様子を何を笑ってるのかと尋ねてみると、皆がこそこそ聞きに来るからだという。
今まで仕事をするときには大声を出すことができず、盗みを働くために小声でこそこそと話していたからだという六左衛門の言葉に眉をひそめる政次。
政次は龍雲丸に挨拶をした。
龍雲丸たちの中には、船で乗っていたもの、金山で働いていたもの、山仕事をしていたものなどさまざまなものがいた。
「大した働きぶりだ。しかし領の境には近づかぬほうがいいな。近藤殿の目につかぬとも限らぬゆえ。井伊がおぬしらを匿ってるのだ。何かあればいつでも引き渡せるということを忘れぬように」と牽制する政次の言葉に
「安心してください、いつでも姿を消しますので」と龍雲丸も応酬した。
政次が行ってしまうと龍雲丸は六左衛門に聞いた。
「何故、殿はあのような家老に気を遣うんですか?」
「但馬殿は今川の目付けでもあるからな」と六左衛門は答えた。
「窮屈な話だな」と龍雲丸は呟いた。
直虎は足早にその場を立ち去る政次に懸命に龍雲丸たちを雇うことの利点を説いた。
「殿があの者たちを飼いならせるというのなら何も申すことはありません」と政次。
「頭は決して盗みはさせぬと約束してくれた」という直虎に対し
「何も悪行は盗みだけとは限りません」と直次。
彼らに気を配ると宣言する直虎に、直次は警告するのだった。
城で盗賊たちの食料を用意する直虎の元に、賊を見たいという高瀬(高橋ひかる)が百姓娘の格好をしてやってきた。
「すっかり百姓娘にしか見えないぞ」と直虎。
たけの心配をよそにまったく平気な高瀬だった。
◉龍雲丸をなぜか男性として意識しはじめる直虎。そして龍雲丸も....
直虎たちは食料を持って龍雲丸たちが木を切る現場を訪れた。
ものすごい音とともに木が倒れてくるのを直虎が感心していると
「少しやってみますか?」と龍雲丸。
倒れた木の斬り方を直虎に教える龍雲丸の手が直虎の手に重なった。
それが妙に気になってしまう直虎。なぜか胸の鼓動が高鳴ってしまう。
たまらなくなって声をあげてその場から逃げ出した。
「煩悩め、滅したと思ったが」と自分に呟く直虎だった。
持ってきた大根を洗うのを手伝いながら、それとなく手下に読み書きのできるものがいるだろう、と尋ねる直虎。
「それは頭だ。どうも侍の家の子のようだったんでさ」
「なにゆえかような身の上に」と尋ねる直虎に「さあ、頭はお互いの身の事を話さないですから」
「武家なんてのは、泥棒も泥棒、大泥棒じゃないですか」
その夜、城に戻った直虎は、龍雲丸が言った言葉を思い出していた。
なにゆえあのように。もしや、亀のように追われ、家には戻れず、あの者は、亀の代わりに井伊を守るために....
直虎の頭に龍雲丸と直親が交互に頭に浮かんでしまう直虎だった。
龍雲丸もまた、直虎が木を切るのを助けて後ろから抱きかかえた瞬間を思い出していた。
「細っこかったなあ」
駿府今川。今川氏真(尾上松也)は悔しさをにじませていた。
今川の目付けである近藤康用(橋本じゅん)の屋敷。鈴木重時(菅原大吉)、菅沼忠久(阪田マサノブ)、近藤の井伊谷三人衆である3人の目付けたちが話をしていた。
「今川の太守様は松平に拒まれたのですか」
「北には武田、西には松平」
「寝返るものも多くありましょう」と近藤。
鈴木は、井伊が材木の商いをはじめたという話をはじめた。
「もしや、木を盗んだ賊をそのまま使っておるのでは?」と疑う鈴木の言葉に
「さすがにそれはございませんでしょう」と笑う菅沼。
それを聞いた近藤の表情が変わった。
◉村民と盗賊たちとのトラブルが発生。龍雲丸たちを井伊に置いておくのが難しくなりはじめる。
その頃、村では盗賊たちについての噂が流れていた。
「あれは元は盗賊だという噂じゃ。ほんとか?」と南渓和尚に尋ねたが
「元を正せばみな、赤子じゃ。大した話じゃない」と和尚は笑って取り合わなかった。
木を斬る男たちの食料を用意する直虎の元に百姓の女房たちがやってきた。
盗賊たちが、博打場を設けたという。おまけに、そこに百姓たちが行ったきりになったので直虎に直訴しに来たのである。
さっそく直之が博打場に乗り込み、博打場で賭け事をする輩を戒めた。
直虎は龍雲丸に注意をしてもらうように頼んだが、大したことではないと取り合わない。
直虎は、井伊が徳政を求め、一揆さえ起きかねない状況だったことを語り、博打を控えてもらうように龍雲丸に頼んだが、それを真に受け止めようとしない。
立ち去る一行を見ながら直之は呟いた。
「悪党は所詮悪党ですな」
しかし、その後も百姓たちと盗賊たちとのトラブルは絶えなかった。
酒を盗まれたというもの、襲われそうになった娘もいるという。
すべてのトラブルの原因が盗賊たちにあるとして、直之は詰め寄った。
「こちらとすれば呼ばれてきているのに、なんでこんな扱いを受けないといけないんですか。今日までの物いただければ、これで引き上げてもよい。そちら側でどうするか話をしてくれませんか」と龍雲丸は直虎に言った。
「ここはいっそ、盛り場を作ってみればどうでしょう」と方久は言った。
遊ぶ場所も何もない井伊に彼らが退屈しているからだというのである。
それを聞いていた政次は言った。
「あとひと月であの者たちが居なくなるのであれば、技を盗め。井伊の領内に分かるものがいれば次からは百姓にやらせればよい。冬場の小遣い稼ぎになるだろう」
その場にいた皆も政次の意見に賛成したが、直虎は納得がいかなかった。
「それではこれ限りになってしまうではないか。我はあの者たちに役目を与え、助け合う仲になりたいと思ったのだ。使い捨てることは本意ではない。あの者たちはさまざまな技を持っている。井伊の民にとり、どれだけの助けになるかわからん」と直虎。
「その井伊の民が苦情を言ってるのです。あの者たちは銭さえもらえば出ていって構わないと言ってます。繋がりを保ちたいを思っているのは殿だけではないですか?」と政次。
◉龍雲丸に告げた事をもう続けられないと思った矢先、あることを思いつく直虎。
直虎は井戸の前で、自分が龍雲丸に言った言葉を思い出していた。
「奪い合わずとも生きられるように済む世の中を作ればいい」
こだわってるのは我だけか、呟く直虎。
彼らと縁を切る決心をした直虎は六左衛門とともに龍雲丸たちの元に向かっていた。
そこで龍雲丸が材木を盗もうとした手下たちを殴っているのを目撃する。
「盗もうが盗むまいが同じじゃないですか。どうせ盗人扱いなんだ」とゴクウ(前田航基)。
「あの尼小僧は糞侍とは違うと言いましたね。あいつは俺たちの事を人として考えてくれているって言いましたね。でもなんですか、これ。話がまるで違うではないですか」とカジ(吉田健吾)。
その時、猪の唸り声が聞こえた。猪に縮み上がる六左衛門。
「なんだ、怖がることはないただの猪だよ」と六左衛門に言った自分の言葉に直虎ははっとした。
ある考えが浮かんだのである。
直虎は六左衛門に頼んで、直虎が彼らに食事を振る舞いたいと言ってる、と伝えさせた。
城に帰り、盗賊たちにご馳走を振る舞うことになったという話に憤る直之たちに向かって直虎はこう言った。
「昨日、不気味な音がしたのじゃ。だが実は猪が通りがかっただけでのぉ。これは、つまりそういうことではないかと思うのじゃ。遠くから見ているゆえ恐れが生まれ、思い違いが生まれる。互いに近づいてみればそれも溶ける。我が連れてきたものたちだ。我にこの思い違いを溶かせてみてはくれぬか」
「思い違いではなかったらどうするのですか?」と政次。
「その時はそなたらの決めたとおりにする」と直虎は言った。
◉果たして、宴を設けることで盗賊と百姓のわだかまりは溶けた。
直之は百姓と盗賊たちと一緒に猪狩りに出かけた。
文句を言う百姓に直之は言った。
「文句なら殿に言うてくれ!」
同じ敵に向かうとき、人は手を結ぶもの。心配するたけの言葉に祐椿尼(財前直見)言った。城では食事の準備が行われていた。
猪を待つ直虎たちの元に一行が戻ってきたが百姓の角太郎がおぶわれていた。
猪を捕る穴に落ちて怪我をしたというのだ。
しかし、彼らはいく前とは打って変わって、仲良さそうに笑顔で笑い合っていた。
待っていたはずの猪がないまま、宴は始まった。
他の盗賊たちも現れたが、後からくるということで龍雲丸の姿はなかった。
宴会の席で酒を盗んだのが別の百姓だったことが発覚した。盗人は盗賊たちではなかったのである。また、娘を襲ったというゴクウは娘の落としたお守りを渡そうとしただけだということが分かった。
「蓋を開けてみたら他愛ないことだったんですね」
その様子を見ていた龍雲丸は和尚に言った。
「尼小僧さまって、不思議なお方だと思いましてね。なんだかんだで人を取り込んでいってしまうと言いますか」
「井伊のご初代さまは、そもそも拾われ子でな、ここはその拾われ子が仲間を増やして治めるに至った土地じゃ」
「あんな風な人だったんですかね。ご初代さまってのは」と龍雲丸は直虎を見つめながら言った。
◉直虎は酔って龍雲丸に好意を語る...のもつかの間、次の問題が発覚...
龍雲丸は直虎のところに来て言った。
「次、猪取ってきますわ。お役目続けていいですかね」
それを聞いて直虎は喜んで言った。
「もちろんじゃ。よろしう頼む」
大喜びする直虎の笑顔を見て、政次はそっとその場を後にした。
その姿を和尚は見つめていた。
小野の屋敷に戻った政次は呟いた。
「くだらんぞ、但馬」
宴は盛り上がっていた。直虎は龍雲丸の横でひどく酔い、席を立とうとする龍雲丸に絡んでいた。
「どうせそなたはどこかに行ってしまうのであろう。どうせどこかに子など設けているのであろう」
酔って完全に目がすわった直虎は龍雲丸にとんでもない事を言っていた。
「そなた、このまま井伊に残れ。我のものになれ」
ちょうどその頃、小野の屋敷の政次の元に近藤康用が訪ねてきたのであった。
(第22話おわり。続く)
◉さるぼぼ母の感想
前回の龍雲丸の回の続編ということで、もしかするとうんざりしている視聴者もいるのかもしれません。私が前回の感想で書いたのとまったく同意見が公のメディアのレビューで書かれていたのは驚きました。
回数稼ぎ?と思われても仕方がない引っ張り方でしたので。
ですが、そこにも書かれたとおり、このドラマの脚本を書いた森下佳子さんは必ずこういった人物描写をする際に伏線を貼ることが多く、今回の龍雲丸の描き方でその意図が理解できたのでした。
なんと、直虎は龍雲丸に対して恋心(?)を抱くことになるようです。そして、龍雲丸もまた、直虎に対して普通ではない気持ちを持つようになります。直親が逝ってしまい、その代わりに現れたのは、政次ではなく、なんと盗賊の頭である龍雲丸だったのですね。
それにしても、やたらと勘がいい南渓和尚なのでしょうか。直虎の龍雲丸に対する気持ちを本人よりもいち早く感じ取る能力といい、政次の気持ちを汲み取る素早さといい。
そうです。ここで政次のせつない気持ちも描かれているわけですね。
まったく直虎に対して感情を見せない政次は、自分を押し殺していつも悪役を演じるにもかかわらず、どうやら龍雲丸に対する直虎の気持ちをいち早く感じ取ってるようですね。
「くだらんぞ、但馬」
と呟く政次を見て、おそらく高橋一生さんのファンは悶えるに違いありません(笑)。
私もちょっとぐっと来ちゃいますね。
それにしてもドラマが始まって以来、始終押し殺した演技をしている高橋さん、どんな風に思って演じているのでしょうね。どこかで聞いてみたいものです。
というわけで、今回も今川や松平、織田の動きはありませんでした。
とはいえ、いよいよ今川が危うくなっていく様子。井伊もうかうかしていられないはずなので、次回は、もしかすると動きがあるかもしれません。
とりあえず、ロマンスがあるようなないような直虎と龍雲丸との関係はどうなるのか、注目していきたいと思います。