『おんな城主直虎』 第35回「蘇りし者たち」のあらすじと感想

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さるぼぼ母です。

『おんな城主直虎』 第35回「蘇りし者たち」のあらすじと感想をご紹介したいと思います。

*詳細なネタバレが含まれますのでご注意ください

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堀川城で徳川軍に襲われ、龍雲丸は瀕死の重症を負って直虎たちに助けられる。


気賀は徳川軍に襲われていた。直虎(柴崎コウ)龍雲丸(柳楽優弥)を槍で突き刺した夢を見て飛び起きた。

瀬戸方久(ムロツヨシ)が命からがら直虎のいる龍雲寺に駆け込んで言った。

「気賀が、気賀が徳川に襲われました」

直虎はすぐさま飛び起きて、龍雲寺の者たち、方久とともに堀川城に向かった。

「生きておるものはおらんか」

直虎は南渓和尚(小林薫)昊天(小松 和重)と共に口々にそう叫びながら、死者が横たわる堀川城の中を生存者がいないか探し回った。

直虎は、足を取られて転んだが、足元に見覚えのある水差しを見つけた。それは直虎が龍雲丸に渡したものだった。ふとみるとその傍に龍雲丸が意識を失って倒れていた。直虎は龍雲丸を抱きかかえて言った。

「息がある。和尚様!おりました。生きているものがおりました!」

瀕死となった龍雲丸は龍潭寺に運び込まれた。龍雲丸の傷は深く、手当をしようとすると叫び声を上げた。龍雲丸の溶態は酷く、意識もないため自分で薬を飲むこともできなかった。

直虎は龍雲丸に口移しで薬を飲ませた。

「戻ってこい、頭。戻ってきてくれ」
直虎は龍雲丸の体をさすりながら、懸命に看病した。

家康の意向を無視して酒井は見せしめのために気賀の民を皆殺しにした。


南渓和尚は方久に尋ねた。
「なにゆえ気賀はあのような酷い事に?」
「徳川様はまずは船で気賀の民を逃してから、大沢を攻め落とすと言っておられたのですが、さような事はせずに城に乗り込み...」

徳川軍は無抵抗の気賀の民を皆殺しにし始めたのだった。

「大沢を下らせるには見せしめがいると言うておりました」

徳川の苛烈なやり口はただならぬ恐怖を与え、浜名の雄、大沢基胤(島田久作)はとうとう徳川に降伏したのだった。

気賀を落とした酒井忠次(みのすけ)徳川家康(阿部サダヲ)に言った。

「気賀は近藤康用(橋本じゅん)に任すということでよろしいでしょうか。気賀では手向かいもございましたので、討ち殺したまででございます」

家康は酒井のやり口に驚きを隠せなかった。降伏してきた民をも射殺したからである。しかし、酒井は手に入れた地を治めるには寛容では足りない、と家康を戒めた。

本田忠勝(高嶋政宏)も、これで今川氏真(尾上松也)のいる掛川を攻められることを喜んだ。武田信玄(松平健)も家康に対し、早く氏真を始末するように催促していたのだった。徳川軍は掛川攻めの仕度を始めた。

しかし、家康の表情は冴えなかった。家康は石川数正(中村織央)松下常慶(和田正人)を呼ぶように命じた。

「和正。常慶を呼べ。誰にも気づかれぬようにな」

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鈴木重時の息子を名乗る少年が、重時のために直虎に経を読んでほしいと訪ねてくる。


龍潭寺に運ばれた龍雲丸の意識は戻らず、高熱に襲われていた。懸命に寝ずに看病する直虎にも疲れが見え始めていた。昊天はそんな直虎に代わって看病を申し出た。

直虎が寝所へ向かおうとすると、少年が一人直虎に声をかけた。
鈴木重時(菅原大吉)が一子、重好と申します。こたび後を継ぐことになりました。父は此度の大沢攻めに徳川方として参じ、討ち死にいたしました。どうか、井伊の殿に経をあげていただけぬかと」

驚く直虎だったが、自分ではなく南渓和尚がもうすぐ戻ってくると重好に伝えた。すると、少年は言った。

「父は殿、次郎様の唄うような経を聴いてみたいと生前申しておりました。父がやったことは存じています。なれど、どうか、憐れと思ってやっていただけませんか」

直虎は鈴木重時のために経を読んだ。その声は、龍潭寺、そして井戸の側にまで流れはじめた。井戸端で手を合わせていた和尚と昊天、龍雲丸の看病をしていた方久たちも直虎の声に驚いた。

経が終わると少年はお礼を言った。
「そなたは、父上の代わりに参陣なさるんですか?」と直虎が聞くと少年は頷いた。

直虎の経がきっかけで、意識が戻る龍雲丸は少しずつ回復をし始めた。


「そうですか。武運を祈ります」やりきれない思いで少年を見送った直虎に、龍雲丸が意識を取り戻したという知らせが入る。龍雲丸の枕元に駆け寄る直虎に龍雲丸は言った。

「妙な経が聞こえてきて」と龍雲丸。
「よう、よう戻ってきたな。よう戻ってきてくれた」と直虎は涙を流して喜んだ。

和尚に自分が助かった時の様子を聞く龍雲丸だったが、他の皆の事を尋ねると、和尚は無言になった。

「頭、戻ってくれて礼を言うぞ。政次を失い、気賀の城を失い、井伊の家の命脈も失った。次郎にとって、そなたの命を助けたことはどれほどの力になることか」

という和尚に龍雲丸は言った。

「おれなんぞで良かったんですかね」

龍雲丸は幼い頃に城が攻め落とされた時の事を思い出していた。

常慶は、ひそかに掛川城下を訪ね、徳川家康の命を今川との仲介者に伝えた。

「徳川様より、和睦の話を言付かって参りました。今川様にお取次いただくことはできますでしょうか」

龍雲丸は少しずつ回復していた。薬も自分で飲めるようになったと喜ぶ周囲の言葉に、飲めなかった時はどうしたのだと尋ねる龍雲丸。

とっさに直虎は自分が口移しで飲ませたのではなく、南渓和尚が口移しで飲ませたと嘘を付いた。そこに現れた和尚へおかしな態度を取る龍雲丸の様子を見て、笑い声を上げる直虎だった。

近藤が戦で重症を負い、家臣が龍潭寺に助けを求めてくる。直虎は憎い近藤を助ける。


その時、近藤の家臣が寺を訪れる。近藤と聞いて、顔色を変える直虎と南渓和尚。小野政次(高橋一生)を罠に嵌めた張本人だったからである。これ以上、近藤が何を要求してくるのか。

しかし、近藤の家臣は怪我人を見てほしいというのである。

「かような時だけ、都合の良いこと」と直虎は憎々しげに言った。

それを聞いた龍雲丸は直虎が昊天と一緒に行ったほうが、近藤に恩を売ることができるから、良いのではないかと提案する。

「近藤のものなど、一人残らず野垂れ死ねばいいのじゃ」直虎は叫んだ。

しかし、直虎は昊天と共に井伊谷の城を訪ねた。なんと、怪我人というのは、近藤その人だったのである。呆然とする直虎。近藤の傷はかなりのものだった。

手当を始めようとする昊天。そして直虎が小刀を手にすると、近藤は直虎に気がついた。

「なにゆえ、この者たちが?わしを殺す気か?」息を呑む近藤は悲鳴を上げそうになった。しかし、直虎は言った。

「殺すつもりならば、このまま捨て置きます」そう言って治療を始めた。

寺に帰った直虎は近藤の様子を龍雲丸に話した。

「可笑しかったな。憐れでもあった。しかし、戦に勝つというのは何なのであろうか。勝ったところでまた戦に駆り出され、声変わりもせぬ後継ぎが戦に出るという。深手を負い,馬にも乗れぬようになるものもある。本当に勝ちなのだろうか。それは」

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家康は常慶を通じ、掛川城にいる今川氏真に和睦を申し出る。


徳川家康は今川氏真に会っていた。

「なにゆえ我を助ける?」と氏真が言うと「我が軍もすり減ってきておりますし。そちらも同じことかと」と家康は言った。

「答えになっておらぬ気がするが」と驚く氏真に対し家康は言った。

「少し戦に嫌気がさしておりまして。私は何も好き好んで戦をしているわけではないのです。せねばならぬように追い込まれるだけで」

そう家康が言うと、氏真は不思議な事を言い始めた。

「良いと思わんか?揉め事があれば、戦の代わりに蹴鞠で勝負を決するのだ。さすれば、人も馬も死なぬ。兵糧も要らない。人も銭もかからん」

その話に賛同する家康に氏真は続けた。

「わからん。それでも戦になる。蹴鞠の無いものを巡り、奪い合いが始まり、それが引き金となり、また同じ事が起こる。和睦は有り難い、三河守殿」

そう言って頭を下げる氏真と、それに対して頭を下げる家康だった。

川名からの手紙。そこにはそこらじゅうに政次の思い出が溢れていた。


龍潭寺。薬を煎じる昊天を方久が見ていると、傑山(市原隼人)は昊天が和尚の計らいで最北で薬を学んだことを説明した。

それを見つめる方久の中で、またもや銭の犬が吠え始めた。

「薬というのは、僧でなければ学べぬものなのですか?」方久は聞いた。

直虎が龍雲丸の世話をしていると、龍雲丸は言った。

「こないだの勝ち負けの話ですが、井伊はさして負けておらんのではないですかね。家の名や土地は無くなりましたが、皆生きておられるのですし、民百姓も戦には連れていかれてない」

「しかし、但馬を失ってしまった」直虎はぽつりと呟いた。

そこに中野直之(矢本悠馬)が川名の里の様子を伝えにやって来た。

政次が死んだことで大きなショックを受けたなつ(山口紗弥加)も次第に元気を取り戻しつつあることなどを伝えた直之は皆からの手紙を差し出した。

贅沢はできないため、皆で一通になった文だった。

高瀬(高橋ひかる)あやめ(光浦靖子)祐椿尼(財前直見)などの元気な様子が描かれたその文のところどころに政次の存在があった。

小石を工夫して亥之助と直久が始めた碁の勝負にも政次を思わせるものがあった。但馬に教えられたとはっきりと分かる二人を見て、なつもあやめも、うめも、祐椿尼も泣いた。

それは哀しいだけではなく、嬉しいことでもあった。

政次の話をそれまですることができなかったが、政次の真似が川名で流行り、皆で競い合うようにして真似をして笑い合うという事も書かれていた。

それを読んだ直虎は泣きながら言った。

「なんじゃ、但馬は生きておったのか」

「残念ながら、皆の心の中にも。そして、虎松様の中にもしぶとく生き続けましょう」と直之。

「そうか」と直虎は言った。

なぜ自分だけが生き残るのか。そう問いかける龍雲丸に自分も同じだと直虎は語る。


それを見ていた龍雲丸が気がつくと、方久が家の者と共に頭を丸め、僧の格好をして現れた。驚く龍雲丸に方久は言った。

「昊天様に弟子入りしょうと思いまして。もう戦道具は売りません。儲かろうと。では何を売るか。儲かって人を助けるもの、それは薬です。それを商います」

方久にこのあとどうするのかと聞かれた龍雲丸は姿を消した。まだ、傷が治ってるわけではなかったのに。直虎は必死で気賀に向かい、龍雲党の跡地で龍雲丸を探した。すると、龍雲丸がそこに倒れていた。まだ体は治りきっていなかったのだ。

「誰か戻ってきておらねえかと思って来たんですが。悪運が強いというか、どうしていつも俺だけ生き残っちまうんでさあね」龍雲丸は言った。

「我もじゃ。頭。我ばかりが生き残る。なぜいつもそうなるのかと。此度もなぜ但馬ではなく、役立たずの我が生き残ってしまったのかと思う。なれど、そなたを助けることができたことだけは良かった。そなたが生きておってくれて、良かった」

そう言って涙する直虎の手を龍雲丸はそっと握った。

家康は掛川城に入り遠江を制圧するが、武田信玄はそれに対して怒り狂う。


掛川城。氏真は妻の春(西原亜希)を相手に酒を飲んでいた。

「北条に戻るのでございますか?」と春。
「徳川様がそれが良いと」と氏真。

氏真の顔が晴れ晴れとしているのを見て春は驚いた。

「叱られるかもしれぬが、肩が軽くなった。桶狭間から10年、わしは身の丈に合わぬ鎧を着けられていたような気がする。これからはわしのやり方でも舵が取れるような気がするのじゃ」

うれしそうに笑う氏真と春は喜び合った。

こうして、家康は掛川城に入ると、遠江全域は徳川の支配するところとなった。

「入れたのう。入れてしまったのう」と家康。

「これで済むと思いますか?武田は怒り狂いましょう」と酒井。

「なんとかなるのではないのか?きっと何とかなる」と家康は言った。

しかし、その知らせを読んだ武田信玄(松平健)は文を破り捨て、怒り狂った。

「おのれ!」


(第35回終わり。続く)

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さるぼぼ母の感想。


政次を失ったショックは直虎にとって相当なものでした。そして、視聴者である私たちも少し気が抜けてしまったような感じでした。ストーリーが少し停滞したかのように思えたのですが、今回は龍雲丸が瀕死の状態で運び込まれます。

それを助けることで自らを助けることになった直虎の様子が描かれます。それにしても徳川家康があれほど平和主義者なのに、家臣の酒井があそこまで残虐というのは一体どういう事なんでしょう。

正直言いますと、阿部サダヲさんの演じる家康像は面白いのですが、少しリアリティに欠けています。今までの家康像というのは、おだやかであっても決してお人好しではなく、どこか狡猾な部分を残した人物というのが多かったように思うからです。

とはいえ、その後延々と続く徳川幕府を築いた家康が、戦嫌いというのはまんざら嘘ではないのかもしれませんし、早く殺せという信玄に対して、氏家に和睦を本当に申し出たのかは、きちんと史実を調べてみたいところです。
こういう事の積み重ねが歴史好きを生むのかもしれませんね。

そして政次を罠にかけた憎き近藤が重症を負って直虎の目の前に横たわります。ドラマは戦を描くのではなく、戦の馬鹿らしさ、無意味さ、そして失うものの大きさを伝えようとしているようです。

しかし、政次ロスについては私もかなり堪えてまして(笑)、次は誰に注目していけばいいのか若干迷っているところです。武田信玄演じる健さんは、居るだけで空気が変わるという面白みはありますが、いかんせん細かい機微は縁遠い感じ。

やはりどう考えても阿部サダヲさんと、成長した虎松を演じる菅田将暉さんですかねー。

あ、今まで全然書きませんでしたが、柴崎コウさんの演技がもう少し上手なら、視聴率ももうちょっと良かったんではないかな、なんて思います。いまだに直虎がどういう人物か、あまり感情移入できないってのは、やっぱり、あれじゃないですかね。

(勝手言って申し訳ありません)

ということで、戦国武将たちの駆け引きが面白くなっていくことを期待していきたいと思います。