
さるぼぼ母です。
『おんな城主直虎』第37回「武田が来たりて火を放つ」のあらすじと感想をご紹介したいと思います。
*詳細なネタバレが含まれますのでご注意ください
龍雲丸と共に新しい生活を始めた直虎だったが、武田の進軍が始まった。
直虎(柴咲コウ)は井伊家の再興を諦め、龍雲丸(柳楽優弥)とともに土に生きる日々を選び、井伊家の人々はそれぞれの道を歩み始めた。
一方、遠江を手に入れた徳川家康(阿部サダヲ)は、今川氏真(尾上松也)と勝手に和睦をしたため、武田信玄(松平健)の怒りを買うことになった。
「今に見ておれ、小僧」信玄は憎々しげに言った。
元亀三年の秋、近藤康用(橋本じゅん)が領主となった井伊谷城ではのどかな日々が続いていた。中野直之(矢本悠馬)と高瀬(高橋ひかる)は近藤の元に奉公し、祐庵尼(財前直見)は龍潭陣に身を寄せ、瀬戸方久(ムロツヨシ)は薬の行商をはじめていた。
そして直虎は還俗し、瀬戸村で龍雲丸とともに百姓として働いていた。
瀬戸村の百姓たちも自分たちで、近藤との交渉を進めるようになっていた。みな、村を運営するのに逞しくなっていたのだった。
そこに面白い話があると、南渓和尚(小林薫)が現れた。なんと、方久があやめ(光浦靖子)の刺繍を見て、銭の匂いがするので一緒になるというのであった。なんとも奇妙な話だと直虎はさっそく龍雲丸に語った。
龍雲丸の様子が少しおかしいことに直虎は気がついた。
直虎が村で女子衆にその話をすると、龍雲丸がどこかで商売でもしたくなったのではないかという。たしかに瀬戸村ののんびりした暮らしは龍雲丸には退屈そうではあった。
なぜ、龍雲丸がここにいるのか聞かれた直虎は、龍雲丸が堀川城でバラバラになった龍雲党の仲間が戻ってくるのを待っていると語った。もうあれから4年も経っているのに。
中村屋は堺で商いを成功させ、龍雲丸を誘うが、直虎は一緒についていくことができないと告げる。
龍潭寺で椿庵尼が縫い物をしていると、若い女性が訪ねてきた。
直虎が龍雲丸に畑仕事を勧めてみようかと家に近づいた時、龍潭寺にいた若い女性が龍雲丸と話をしているのが目に入った。なんとその女性は龍雲丸と抱き合っていたのであった。その姿に怒りを隠せない直虎は、龍雲丸を問い詰め、女性が渡した文を取り上げた。
恋文とばかり思っていた直虎だったが、それは中村屋からの手紙だった。
そして、龍雲丸と抱き合っていた(ように思えた)女性は、龍雲党の一人でまだ子供だった環だったのである。中村屋の船で逃げることができた環は世帯を持ったのである。
中村屋は堺におり、商いを営んでいた。それもうまく行き、人手も足りないので、龍雲丸に手伝ったほしいという旨の文を寄越したのであった。堺は気賀と同じ商業の街だが、気賀の何倍もの規模があり、異人も出入りして船で海の向こうまで行くような場所だと龍雲丸は語った。
「お宝を探しておりやした。あてどもねえ旅にございますよ」と突然、直虎は龍雲丸の真似をした。出会った頃に龍雲丸がそう語ったのだった。そして、ぽつんと言った。
「いいのではないか? 頭の性に合った話じゃと思うぞ」と直虎。
「とわも共にいかぬか?共に堺に」と龍雲丸。
しかし直虎は首を横に振った。自分が家を潰し、皆を弔うべく出家すべきところを還俗し、この上、出て行くことなど罰当たりにも程があるというのである。
しかし、龍雲丸はそんな直虎に言った。
「どうせ罰当たりなんだからいいんじゃないか。多少取り繕ったところで、仏様はお見通しだ。もう、ここでやることもないだろう」
その言葉を聞いて龍雲党の皆がここを訪ねてきた時にどうするんだ、と言ったが、龍雲丸は言付けておけばいいだろう、というのだった。龍雲丸は、もう瀬戸村で炭を焼いていても、彼らが戻ってくるわけでも、直虎が百姓をやっていても、政次が戻ってくるわけでもない、と言った。
「そんなことは分かっておる」と直虎は言った。
高瀬に近藤の暗殺を命じる謎の男。直虎は龍雲丸についていくことを決める。
高瀬が井伊谷にいると、行商の格好をした不審な男がやって来た。
男は高瀬に言った。
「近く、武田が攻め込んでくる」
「しかし、井伊はもう潰れてしまいましたし」と高瀬。
「分かっておる。井伊に今の城主を殺してほしい。しくじれば、命はあると思うなよ」と言って、男は高瀬になにか包みを渡した。
祐庵尼が直虎のところに甘いものを持ってやって来た。母は堺にいく事をすでに知っていて、直虎にいつ頃旅立つのかを尋ねた。中村屋の使いの少女が寺に来たので分かったのである。
「で、そなたは共に行くのですか?」と祐庵尼は聞いた。
いかない、と言う直虎になぜ?と問いただす母。自分にそんな事は許されるわけない、という直虎に、祐庵尼は共に行ってほしいと語り、自分には直虎の孫を抱くという野望があると語った。
龍雲丸をここで手放しては、決して相手など見つからない。ここは母のために龍雲丸と共に行ってくれないか、と祐庵尼は直虎に懇願した。
その言葉に直虎は母に感謝するのだった。
家に帰った直虎は龍雲丸に共に堺に行くと告げた。母が孫の顔を見たいので行けと言ってくれたことを伝えると龍雲丸は笑顔になった。
直虎と龍雲丸は祐庵尼に感謝の念を伝えに改めて挨拶に行った。年明けに堺に行くことにしたのだった。
その頃、高瀬は龍潭寺に来て仏を拝んでいた。あの使いに近藤を殺せと言われたことを思いだしていた。そこに直虎と龍雲丸が通りかかり、高瀬の様子が少しおかしいことに気がついて声をかけたが、それもつかの間、直之が現れて武田がとうとう、武田が遠江に攻め込んで来たことを伝えた。
武田は破竹の勢いで遠江に攻め入った。直虎は井伊の人々を救うために戦況を見定める。
10月3日、武田は駿河、信濃の二方面より遠江の徳川領に攻め入った。さらに、織田も武田に一杯食わされ、北条氏康の死後、北条と武田は和睦を結び、織田も劣勢となっていると松下常慶(和田正人)が報告すると、徳川陣営は騒然となった。本田忠勝(高嶋政宏)が織田からの援軍の到来について尋ねると、榊原康政(尾美としのり)はこのような状況では、助けてもらえる見込みは薄いと言った。徳川軍は丸裸だった。家康はその中でも碁盤に向かった。
直之は直虎や南渓和尚を前にして、戦況を説明した。何の前触れもなく攻めてきた武田に対し、守りを固めるように近藤らに通達があったらしい。
南渓和尚は直虎と龍雲丸に堺に立つように言ったが、それを聞いて抵抗する直虎。しかし、もう直虎は殿でもないので、母の願いを聞いてやるべきだ、と和尚は言った。
しかし、それを聞いて龍雲丸も行きたくない、直虎が無理に連れて行って納得するわけはないし、井伊が戦場になってしまったら、今度こそ皆を逃さなければ、と語った。
和尚は直之にどうするか尋ねた。近藤の家臣となった直之に対し、和尚たちは歯向かうかもしれないのであった。しかし、直之は言った。
「某が近藤どのに仕えているのは、井伊の民を守るためです」
「では、我らがせねばならないのは、武田と徳川の雲行きを見ることだな」と和尚。
徳川が有利なら、近藤に任せるべきだし、逆の場合はとてもむずかしくなる。一番良いのは近藤が武田に降伏することだったが、近藤の気性では仕向けるしかなかった。
徳川は織田を裏切ろうとするが、織田の援軍を受けて大敗する。
武田は鬼神のような勢いで遠江の城を次々に落とし、井伊谷に近づきつつあった。徳川陣では戦況について常慶が報告していた。寝返るものもおり、武田の軍勢は2万を超えていた。織田の軍勢は?と本田は尋ねたが、常慶は諦めたほうがよい、と語った。
そんな時も碁盤を見つめる家康を酒井忠次(みのすけ)が戒めると、家康は言った。
「遠江を武田に割譲し、武田と和睦を結ぶ」
「今度は織田に武田と勝手に和睦をしたと言われます!」と家臣が言うと
「後ろ向きの話ではない。武田は織田も滅ぼすつもりなのだろう?聞くところによると、上方の織田に反する大名衆も武田に与しているともいうではないか。ならば、織田を斬り捨て、武田に付いたほうがよいのではないか?」
それを聞いた家臣たちは戸惑った。そんな事が織田に知られれば、と心配になったのである。しかし、家康は武田には事情を伏せてもらうよう頼めばいい、と語った。
しかし、その時、織田の援軍が現れたのである。呆気に取られる家康たち。
織田家重臣である佐久間信盛が現れた。
「ずいぶんとおまたせした。死力を尽くし、徳川殿をお助けするようにと参上しました」
家康の思惑はうまく行かず、戦うしかなった。
こうして徳川は戦うことになったが、家康は脱糞をするほどの大敗北をした。
直虎は井伊の百姓たちを逃散させる作戦に出た。
この戦況の様子を直虎たちは伺っていたが、どう考えても武田の圧勝だった。近藤は、どうあっても徳川軍として戦うつもりだと直之は言った。城を枕に討ち死にする位の勢いだと直之。
「やりますか。殿」と直之。そして龍雲丸も動き出した。
龍雲丸は瀬戸村に行って八助に声をかけた。そして、八助が皆を率いて百姓たちは村をあとにした。近藤は裳抜けになった村を見て、直虎を出せと龍潭寺に怒鳴り込んできた。こんなことをするのは直虎しかいない、というのである。
「私の見たところ、百姓たちは戦いたくなかったんだろうと。逃散は井伊の百姓の得意の手ですし」と昊天(小松 和重)。
「武田の破竹の戦いぶりは聞こえておったしのぉ」と和尚。
その言葉に不審なものを覚える近藤に対して和尚は言った。
「近藤殿。ここはいっそ、武田に与してはいかがだろう?その体では満足に戦うこともできないだろうし、武田はもうそこまで来ている。百姓を連れ戻す暇はないでしょう」
空の弓を近藤に撃った傑山(市原直人)に対して、近藤は脅しの言葉を放った。
百姓たちに逃散(農民抵抗の手段で他領に逃亡すること)させることによって、直虎は近藤に武田との戦を思いとどまらせようとしたのである。
百姓たちを移動させた直虎は高瀬が見当たらないことに気がついた。
高瀬は近藤に毒を盛ろうするが失敗し、直虎は武田に帰順するよう説得するが井伊谷城に火をつける近藤。
武田の軍勢は井伊谷の目前まで迫っていた。高瀬は井伊谷の近藤の元に戻っていたのであった。直虎は門の外で直之と連絡を取り、作戦を進めた。
その頃、高瀬は近藤に食事を出そうとしていた。そして、あの男からもらった薬を食事の中に入れたのだった。近藤が高瀬を心配する言葉を聞いて、どうしようかと一瞬迷う高瀬だったが、ちょうどその時、武田がやってきたという知らせが入る。
食事の膳を急いで下げる高瀬だった。
近藤が家臣を前に、武田の軍勢について直之に尋ねた。武田の兵は二万という言葉に皆がひるんだ。その時、家臣の中に潜んでいた直虎が声をあげた。
「それでも戦われますか?」
近藤が家臣に直虎を捕らえるように命令すると、一斉に刀を向ける家臣たち。しかし、直之は近藤の首に刀を当てて、近藤に直虎の話を聞くように言った。
「近藤様。此度の戦い、到底勝ち目はございません。尊い命を散らすなど、惜しいと思いませんか?」と直虎。
直虎が小細工せねば勝てるという近藤に続ける直虎。
「いいえ勝てません。せいぜい井伊の兵は500、二俣城は2000で落とされたと聞きます。それでも井伊だけは奇跡が起こるというのですか?この上はどうか武田に帰順し、開城の使者を立ててください。そのお命は我ら寺が救いますので。何卒帰順していただけないでしょうか」
その言葉を聞いて近藤は言った。
「三十六計逃げるに如かず(形成が不利になったときは、あれこれと策を練るよりも逃げるべきときに逃げて身を守る方法もあるということ)、か。皆と共に逃げるとしよう。ただし、帰順はせぬ。城に火を放て。死んでも武田に城は渡さん。これ以上は譲れぬ」
そう言って、近藤は井伊谷城に火をつけた。逃げようという直之の言葉を遮って、龍雲丸と高瀬を探しに城に戻る直虎。
高瀬は一人考え続けていた。燃えて崩れ去りはじめる城の中で龍雲丸が高瀬を見つけ、そして直虎も二人を見つけて、外に出た。
井伊の城は燃えてしまった。しかし、焼け死んだものは一人も居なかった。
(第37回終わり。続く)
さるぼぼ母の感想。
直虎は完全に百姓となって、龍雲丸と共に暮らすのどかな日々が描かれます。あれから4年という設定になっているのです。直虎は事実上、龍雲丸と結婚していることになるのですが、史実はどうなんでしょうね。
そして、徳川家康は武田の猛攻撃に劣勢になります。織田に助けを求めたいような、裏切りたいような、やじろべえのような家康の姿が描かれていますね。阿部サダヲさんの演じる家康は本当になんだか武将というにはあまりに頼りない感じですが、真面目な宰相というよりは、コメディタッチで進んでいくのでしょう。
そして、高瀬の元に現れ近藤を殺せと命じた謎の男と高瀬の関係は何なのでしょうか。もしかすると、高瀬は直親の子ではないというのでしょうか。
そして近藤をまたもや助ける直虎。近藤なんて死んでしまえばよい、と思っている政次ファンは多いのではないかと思いますが、まだまだ生き残るのですね。
そして、ついに井伊谷城が燃えてしまいます。皆の心の中にある井伊ですが、シンボルでもあった城が燃えてしまったあと、直虎は龍雲丸とともに堺に行くことになりそうです。