
さるぼぼ母です。
『おんな城主直虎』第50回最終回「石を継ぐ者」のあらすじと感想をご紹介します。
*詳細なネタバレが含まれますのでご注意ください
本能寺の変で信長が討たれ、追い詰められた明智が討たれる。
「敵は本能寺にあり」
天正十年六月二日、明智光秀(光石研)が起こした本能寺の変により織田信長(市川海老蔵)は討ち取られた。この混乱の中、無事に三河に戻った徳川家康(阿部サダヲ)は信長の仇を討つべく羽柴秀吉に請われて、何食わぬ顔をして明智攻めに出陣する豆狸ぶりを発揮するのであった。
家康を無事三河に送り届けた井伊直虎(柴崎コウ)は預かった明智の息子自然(じねん)を守るべく、龍雲丸(柳楽優弥)に井伊に戻ることを告げた。龍雲丸はこの後、南蛮に渡る船に乗ると直虎に告げ、直虎はあの水筒を餞別として龍雲丸に渡した。
「かしら。我より先に死ぬなよ」
「そっちもな」
そう言い合って別れた二人だった。
浜松城には明智が討たれたという知らせが入ってきた。今川氏真(尾上松也)は急いで井伊万千代(菅田将暉)に、明智に加担した証拠である自然を何とかする必要があると伝えた。
それを聞いていたのは家康の母である於大の方(栗原小巻)だった。
明智の息子自然を亡き者にしようとする於大の方。
井伊谷に戻ってきた直虎が急いで自然を隠れ里に隠さなければ、と南渓和尚(小林薫)に伝えたその時、万千代がやってきて、自然を徳川で預かるという。
「殿がその子の身の安全のためにもこちらでも引き取れ、と」と万千代。
それを聞いた直虎は万千代に詰め寄った。
「この子を葬り去るつもりか? 徳川様がそうせよと言うたのか?」
その時、声がした。それは徳川の母である於大の方だった。
「わが命にございます。お頼み致します。その子をお渡しくだされ。お家のためでございます」
それを聞いた直虎は言った。
「己の子以外、お見えにならぬのか」
子を持たない直虎にはわかるまい、と於大の方は言ったが、どの子も等しく我が子のように見える、この子はすでに井伊の子、お家のためというならこちらも井伊の家のために渡すことはできない、そう直虎はきっぱりと言い放った。
於大の方に自然を連れ去るよう命じられた万千代が直虎に向かってこようとした瞬間、傑山(市原隼人)が万千代に矢を向けた。
「若はどうやって生き延びてこられた?答えられよ!」
自然を追ってきた織田の家臣に信長の子だと嘘をついて自然を守る直虎。
と、そこに織田の軍勢が自然を追って現れた。何かの間違いでは?という万千代の言葉を遮って、織田の武将は自然を指して、その子はどこの子かと詰め寄った。
とっさに直虎は言った。
「この子は亡き上様の子であられまする」
大嘘にもほどがある、と怒りを隠せない織田の家臣に直虎は子を預かる代償として信長から授かったとして、あの茶碗を差し出した。にわかには信じようとしない家臣だったが、茶碗の中の直虎宛の文を見せると顔色を変えた。
「まあ、一度お戻りになってからお考えになれば。上様の子を斬り殺してしまったとなれば、ただでは済みますまい」
直虎の言葉に家臣はまた来る、と言葉を残して去った。直虎は自然を抱きしめた。それを見ていた於大の方に直虎は言った。
「この子の事は、徳川様に類が及ばぬようにうまく計らいますのでご案じなく。守れぬ命は山のようにありますので、守れるものは」
それを聞いた於大の方は言った。
「織田様の忘れ形見のお子の事、どうかよしなにお願い申しあげまする」
井伊谷を寺だけにしてしまおうと語る直虎。
それからしばらくして自然の得度式が行われ、自然には「悦岫(えっしゅう)」という名がつけられた。何事にも縛られることなく喜んで自然に生きることを選ぶという意味だと昊天(小松和重)は言った。
そこに新野の長女あやめ(光浦靖子)が桜や桔梗のことで直虎にお願いがあると言ってきた。桜の夫も羽柴に仕えながら志を得られず、いっそ徳川に仕えたい、また夫に先立たれた桔梗も何とかしてほしいと頼んで来たのだった。直虎はこの際、新野の者をまとめて万千代に引き取ってもらえないかと和尚に相談した。
「そうなると、もう井伊の縁者はわしとなつ(山口紗弥加)と高瀬(朝倉あき)だけか」と和尚は呟いた。
高瀬も万千代のところに送ろうと思っている、と直虎は言った。表の世でうまくいかないものを逃したり、生き直す場を与えたり、世に戻すための洞穴のような場所が必要かと、そのためにここには世捨て人がいるような寺があるだけの方がいいのではないか、という直虎だった。しかし少し前からおかしな咳が治らずにいる直虎だった。
「逃げ回り、策を巡らし、挙句潰しまでし、それでも命脈を辿ってきた井伊じゃ。それは井伊が追うべき役目かもしれないな」和尚の言葉に直虎はうなづいた。
直虎の体を病が蝕もうとしていた。
直虎は近藤康用(橋本じゅん)のところに出向いたが、近藤からもちょうど話があるという。近藤が言うには、高瀬を近藤の養女とし、ゆくゆくは井伊と近藤の行く末のために万千代の嫁にできないか、というのだった。それを聞いた直虎は大きな口を開けて驚いた。横で聞いていた高瀬もあんぐりと口を開けていた。
それを見た近藤は笑いながら「同じ顔をしているではないか、やはり親子だな」と言う。近藤は高瀬が井伊の娘であることをとうに知っていたのである。騙されたふりをしていれば手元にしばらく置いておけると思ったが、それも潮時だ、と近藤。
直虎は寺だけを残して井伊の家を畳んでしまおうという考えを近藤に語った。それを聞いた近藤は驚いて、隠居するのかと尋ねたが、直虎はここから徳川に天下を取らせたいと笑いながら言ったが、その時、すでに直虎の体を病が蝕んでいたのだった。昊天の見立てによると風邪をこじらせたのだろう、ということではあったが。
「年にございますのぉ」
「互いにの」
直虎と和尚は笑い合った。
直虎は見送るばかりだった自分の人生について話をはじめた。この世に未練などないと思っていたが、今になって生きたいと思っていると直虎は言った。井伊の元に皆が集い、徳川の元に日ノ本中が集うのをこの目で見てみたい、というのだった。
子供のおとわに戻った直虎を、死んだ皆が迎えに来る。
その頃、旧武田領の混乱に付け込んだ北条が上野に侵攻、続いて甲斐・信濃に攻め込み、徳川は北条と戦うはめになっていた。徳川陣はこの先どのように進めるか考えあぐねていた。家康は万千代に兵の疲れを癒やすために笛を吹くように命じたが、入れたはずの荷物の中に笛は見当たらなかった。
井伊谷の直虎は咳がいまだ止まらずにいた。ふと、その時笛の音がした。それは、なんと直親の笛の音だった。直虎が井伊の井戸に行ってみると、そこには子供の姿をした直親が居た。
「亀?」
すると、やはり子供の姿をした政次が現れた。
「鶴? そなたらなにゆえ子供の姿に?」
「おとわも子供ではないか」という亀の言葉に自分の姿を見てみると、なぜか直虎も子供のおとわの姿に戻っていた。この先の事を見たいと言っていたではないか、行こう、皆も待っているという二人の言葉に歩き出したおとわだったが、ふと我に返り言った。
「いやじゃ、この先やらねばならないことがあるのじゃ。やっと先が見えてきたのじゃ」
おとわがそう言うと、亀之丞は言った。
「大事ない。おとわが俺の志を継いでくれたように、次は誰かがおとわの志を継いでくれる」
その時、子供の姿をした龍雲丸が現れた。
「おーい。俺も連れてってくれ。今度こそは一緒に行けるじゃないか」
そして、4人は井戸を覗き込んだ。
「皆様、参りますぞ。いざ」
直虎の死に打ちひしがれる人々。そして万千代もまた。
直虎は井戸のほとりで息絶えていた。その顔には笑みが浮かんでいた。
井戸に現れた昊天が死んでいる直虎を見つけた。
「次郎....」
傍には直親の笛が落ちていた。そして、海岸。浜辺には直虎が龍雲丸にあげたあの水筒が転がっていた。
龍雲寺では直虎の葬儀が行われた。しの(貫地谷しほり)も駆けつけていた。南渓和尚は直虎には経は読みたくない、とその場にはいなかった。
南渓和尚はひとり猫を抱きながら呟いた。
「いわぬこっちゃない。もうボロボロじゃないか。そなたが読んでくれるはずじゃなかったのか。わしの経を。罰当たりな猪が....」和尚は一人涙していた。
直虎の遺骸は村人たちによって実りたわわな稲の前に運ばれてきた。百姓たちは叫んだ。
「殿。今年も実りました。来年も再来年も楽しみにしていてくだされ」
戦地から戻ってきた万千代に家康は井伊からの文を差し出した。それは直虎の死の知らせだった。一緒に戻ってきた中野直之(矢本悠馬)、小野万福(井之脇海)、奥山六左衛門(田中美央)も直虎の死を知り、声を上げて泣いた。雨が皆の涙のように降り始めた。
直虎の意志を継いでもらうべく和尚が万千代に渡したものとは。
徳川は北条と和睦を結ぼうとしていた。直虎の死から立ち直れずに気が入らない万千代を榊原康政(尾美としのり)は怒鳴った。万千代の元に和尚が訪ねてきた。
和尚は万千代に井伊の井戸端に落ちていた直親の笛を渡した。直虎がその傍らで笑って死んでいたという。
「皆がもういい、と迎えに来たのではないか」と和尚は言った。
「何かお言葉などは?」と万千代が聞くと、和尚は碁石を差し出した。
「井伊の魂じゃ。魂とは何じゃ?」
井伊は井戸端の拾い子が作った国、そのせいか殿はよそ者に暖かかった、民には竜宮小僧のようにあれかしといい、泥にまみれことも厭わず、恐れず、戦わずして生きて行ける道を探る。そういう万千代の手に和尚は碁石を握らせた。
「殿は小さな谷でそれをやった。そなたはそれを、この日の本を舞台にやるのじゃ。たのんだぞ」
そう言い残して和尚は去った。万千代は碁石を見つめ、握りしめた。
万千代は北条との交渉を自分がやると家康に申し出る。
万千代は家康の前に戻り、北条との和睦の交渉を任せてほしいと申し出た。若造に任せられるかという声に万千代は言った。徳川の下に入れば、たとえ敵でも若造でも、潰れた家の子でも悪いようにはされず、使者を任せるほどに扱ってもらえる、自分がそうだからである、というのだった。
「ただの和睦では困る、甲斐と信濃はこちらのもの、それを北条に認めさせ、かつ国衆たちにも火種が残らぬようにする、それをそなたにできるのか?」と榊原。
それに対し万千代は「潰れた家の子だからこそ、やってみせる」と宣言し、家康も万千代にその任を命じた。
万千代、万福、六左衛門、直之は甲斐、信濃の国衆から徳川に臣従を誓うという証文を取ってしまい、北条が異を唱えにくい状態を作るという戦略を立てた。そこに瀬戸方久(ムロツヨシ)が直虎の硯を持って現れた。万千代に使ってもらえば、これより嬉しいことはない、と方久は言った。
家康の元に於大の方が南渓和尚が持ってきた書状を差し出した。そこには「直政」という文字があった。
和尚は夜空に向かって叫んだ。
「待っておれよ、おとわ」
万千代は北条との交渉を見事まとめ上げ、ついに元服をすることなる。
万千代たちは書状を持って国衆の説得に出向いた。皆、自分の身の上を説明し、徳川に仕えれば今日のような役割を与えられなかったと言って回った。
こうしてすべての国衆が徳川に臣従を近い、万千代はその書状を持って北条との交渉に臨み、見事に北条との交渉をまとめ上げた。徳川は一気に天下の大大名に上り詰めたのであった。
北条との交渉の成功に沸く徳川の城では、家康自ら狸に扮し、氏真と家臣とともに宴に興じていた。宴は最高潮に盛り上がり、万千代は酔いしれていた。
「欲しいものをいえ。今ではなんでも与えられる」
そう言った本多忠勝(高嶋政宏)の言葉に万千代はこう答えた。
「では元服を」
こうして、ついに、ようやく万千代の元服の儀が執り行われた。
「井伊万千代、今日これよりは直政と名乗るがよい。井伊の通字である直、小野の通字である政を取ってそなたの名とせい。わしはこれより良い名はないと思うがな」と家康。
「百尺竿頭に一歩を進む。大死一番絶後再び蘇る。何事も大志あってこその蘇りにございましょう。新しい井伊はこの方々から始まったのだと、井伊直政、この名と行いを通して伝えて行く所存にございます」と万千代は言った。
万千代には「直政」という名が与えられ、井伊家は240年続く徳川幕府の屋台骨を支えることとなる。
「では、この度の働きに対し、井伊直政に褒美を遣わす」榊原が言うと、奥から続々と武士たちが現れた。
「徳川家臣より松下、木俣、川手、織田方より参じた庵原、国衆より近藤、鈴木、菅沼、さらに武田より新たに臣従した赤備え組の武者たち。これらを井伊直政の普請。侍大将として取り立てる」
その中には松下常慶(和田正人)、近藤康持、そして井伊谷三人衆、方久の姿もあった。
家康は言った。
「直虎殿は最期、お家の潰れる憐れを考えていたそうじゃ。ならばこれは井伊が引き受けるに相応しいと思わぬか」
「恐悦至極に存じます」万千代は頭を下げた。
井伊谷の井戸のほとりで南渓和尚は亡くなったものたちに盃を並べていた。
「新しい船出じゃ。みなさま、いざ」
そして、直政は井伊の赤鬼となった。若造と馬鹿にする家臣たちの言葉を聞いて、自ら一番に突撃していく直政に家臣たちは度肝を抜かれた。
時は戦国。混乱の世。その流れに果敢に飛び込んだ直虎。彼女が守り続けた井伊の意志は260年もの間、徳川の屋台骨を支えることになったのだった。
(最終回。終わり)
さるぼぼ母の感想。
一年間続いた「おんな城主直虎」の最終回でした。あっという間の展開に少し消化不良な感じが残らないこともありませんでしたが、直虎もいきなり死んでしまいましたね。
うーん、ちょっと終わらせようとしすぎた感じが否めませんでした。
後半、直虎が家康とどのように関わっていくのかと少し期待してはいたのですが、万千代との関わりもあまり深くは思えなかったですし、徳川家康とはたぶん2,3回会っただけ?ですよね。あまりに目まぐるしくいろんなことが詰め込まれ過ぎていた回で、消化不良になりそうでした。
少し登場人物が多すぎて、それぞれのキャラをふくらませるのが難しかったのではないでしょうか。一人ひとりを何とか人間的に描こうという感じは良かったのですが....。皆が少し中途半端になってしまったように思えます。
結局このドラマの一番の盛り上がりはやはり政次だったのかもしれません。もう少し物語自体を大事にする脚本であってほしかったです。
さて、来年の大河は「西郷どん」ですね。林真理子さんの原作ということで、おそらく一曲も二癖もある内容になっている気はしています。ちょっと楽しみ、かつシニカルになりすぎなければいいかな、とは思っているところです。
とりあえず一年間ありがとうございました。
「おんな城主直虎」の見逃し配信はU-NEXTで。
31日間無料トライアルで今すぐ見たかった放送回をチェック!