さるぼぼ母です。
大河ドラマ「西郷どん」第8回「不吉な嫁」のあらすじと感想をご紹介します。
*詳細なネタバレが含まれますのでご注意ください
須賀が嫁に来て、半年も経たない間に父・母を相次いで亡くした西郷家は相変わらず貧乏だった。
嫁をもらった西郷吉之介(鈴木亮平)は、それから半年も経たないうちに、父の吉兵衛(風間杜夫)と母の満佐(松坂慶子)を相次いで亡くした。祖父・龍右衛門(大村崑)を含めて次々に3人を亡くした西郷家だったが、翌年は良い年になるように、と墓の前で祈るのだった。
墓の前で嫁の須賀(橋本愛)は、自分が居ると良い年にはならないと言い出した。
「私がおって、良い年にはならないと皆思っています。近所の人が私を何と言ってるか知ってますか?不吉な嫁だと。私が嫁いで、父上も母上も立て続けに亡くなってしまって」と須賀。
そんな須賀に、誰が何と言おうとそんなことはない、今年こそは良い年になる、と須賀に言い聞かせる吉之介だった。
その年の5月。自分が嫁入り道具として持ってきた新しい布団を質に入れ、ボロボロの布団を干す須賀に吉之介はねぎらいの声をかけた。相変わらず西郷家の家計は苦しかった。
その時、大久保正助(瑛太)が吉之介のところにやってきた。お城からお達しがあって処分が解かれたというのである。正助は記録所書役助に戻れることになったのだ。正助の復帰を喜び合う二人。正助は吉之介が島津斉彬(渡辺謙)に直訴してくれたからだと礼を言うのだった。
ペリーが浦賀に来港し開国を求める事態が国を揺るがし、斉彬は動き出す。
そのひと月後、国中を揺るがす大変な出来事が起こった。嘉永六年6月3日、ペリー率いるアメリカの艦隊が浦賀に現れ、幕府に開国を求めたのだった。アメリカが幕府に送ったものは、白旗だった。降伏の印である白旗を掲げないと、アメリカは攻撃を加えるというのだった。
その頃、斉彬は参勤交代の帰路で尾道にいた。ペリーが浦賀に来航をしたことを慌てふためいて伝える山田為久(徳井優)に、斉彬は落ち着いて応答した。すでに斉彬は黒船の詳細を琉球からの報告やジョン万次郎からの報告で知っていた。
急ぎ、薩摩に戻った斉彬は急遽、黒船の来襲を見据えて鉄の大砲づくりを急がせた。アメリカが攻めてくるのでは?と危惧する家臣たちに、斉彬はきっぱりとアメリカとの戦争を否定した。黒船の来港を好機と捉え、対等にアメリカと交渉するべく兵力を増強し、開国ともなれば、新しい兵力を持つ薩摩こそが新しい政治の一翼となるというのだった。
そして斉彬にはそれ以上の計画があった。斉彬は薩摩藩重臣、桂久武(井戸田潤)に斉彬の養女となった於一の方、改め篤姫(北川景子)を江戸に向かわせるよう命じた。篤姫は江戸へ行く準備を進めることになった。
斉彬は吉之介を江戸行きに同行するよう直々に指名するが、江戸行きには大金が必要だった。
桂久武は吉之介を呼び出し、斉彬が内々に江戸幕府老中阿部正弘(藤木直人)に呼び出され、江戸に向かうことになり、その伴として吉之介を直々に指名していると伝えた。驚く吉之介に、出立は年明けだと桂は伝えた。
「ありがたき幸せでございます」と吉之介。
吉之介は喜びいさんで家に帰り、父と母、祖父の位牌の前でそれを報告した。家族全員が吉之介の江戸行きを喜び合う中、嫁の須賀は言った。
「私はめでたくなか。支度金がいくら必要か知ってるんですか?ご存知なかとですか?」
支度金について想像できない吉之介に須賀は、三十両が必要だと伝えた。それを聞いて驚く吉之介と家族たち。
「この家で三十両もの大金が作れるはずがありません」と須賀。
西郷家の人々は少しずつお金を借りれば、あるいは畑を売れば、と知恵を出し合うが、須賀はこの家にはまだ借金があるから無理、と決めつけるのだった。そして、須賀は言った。
吉之介は江戸行きを反対する須賀を気遣い、江戸行きを断念しようとする。
「それに江戸に行ったら、いつ帰ってくるのですか。いつ帰ってくるかわからない旦那さんを借金まみれの家で待つのは私はごめんです」
それを聞いて誰も言葉を発することができず、吉之介は江戸行きを諦めようとしていた。子供の頃に斉彬からもらったアルファベットで「鹿児島」と書かれた紙を見つめていた吉之介に正助が声をかけた。斉彬に直々に江戸行きを指名されたと伝える吉之介が元気がないのを、正助は見逃さなかった。金がない。三十両は用意できない、と力なく言う吉之介を、そんなことで諦めるのかと正助は激怒した。
「おまえ正気で言ってるのか?見損なったぞ、吉之介さん。思い焦がれてようやく手に入るというのに」
その正助の言葉に自分は一家の主でもあり、まだ幼い弟たちや、嫁に行かせなければいけない妹もいる、と言い訳する吉之介に、正助は殴りかかった。二人は殴り合いを始めた。しかし、そこに須賀が割って入った。
「旦那さんは、私のために、江戸行きを諦めてくれたんです。夫婦の事に他人は口を挟まないでください」と須賀。
「こげな女房の言いなりになりおって」と正助。
その言葉に吉之介は激怒した。
「人の女房の悪口を言いおって!!」
そして、二人は殴り合いの喧嘩をするのだった。
吉之介は篤姫の指名で指宿からの警護に当たることになる。
翌朝、桂久武に再び吉之介は呼び出された。今度は篤姫からの指名で指宿(いぶすき)に行ってもらいたいという。今泉にいる篤姫は数日のうちに鶴丸城に上がるという。その警護役ということだった。なぜ自分に?と不思議がる吉之介に、桂も自分はわからないが、殿に篤姫に、吉之介は人気があるなあ、と言うのだった。浮かぬ顔の吉之介の表情を桂は不思議がるのだった。
その頃、吉二郎(渡部豪太)と琴(桜庭ななみ)、熊吉(塚地武雅)は、正助の元に行き、吉之介を江戸に行くように説得してほしいと頼むのだった。吉之介には話はもうできない、という正助に、3人は頭を下げて頼み込んだ。
「俺を巻き込まんでくれや」と正助。
それを須賀は近くで聞いているのだった。
西郷家の人々は、竹を家に運び込み、籠を編む内職を始めた。売れるものがないかどうか、父が残した焼酎を売りに行ったり、幼い弟たちも金を稼ぐと出ていった。正助の母たちも内職の手伝いにやってきた。
しかし、それを見た須賀はそんなことをしても無駄だ、里に帰らせてもらう、と実家に引き上げて行った。正助は吉之介の残したあの紙を見つめていた。
吉之介はその頃、指宿から鶴丸城に篤姫の警護で伴をしていた。休憩の最中、呼ばれて行った先には篤姫がいた。ひれ伏す吉之介に面をあげるように篤姫は言った。
「そなたに礼を言いたくておりました。御前相撲でそなたが勝たねば私はここには居なかった。わからなくてもよいです。私はそなたのお陰で殿の娘となり、薩摩ともお別れをするこことになりました。お城に上がり、またすぐに江戸に行きます。江戸でお役に立てるかわかりません。今泉で生まれた私が江戸に行き、殿のために働くことができるなんて、本当に信じられません。西郷、次は江戸で会いましょう。お殿様を思いっきり投げ飛ばしたそなたを放っておくはずがありません。そんな男はこの薩摩に西郷一人じゃ。西郷、共にお殿様のために尽くそうぞ」
笑顔で西郷に語りかける篤姫の顔を見て、吉之介は力強く頷いた。
もう、そこには江戸行きに迷っている吉之介はいなかった。
吉之介の江戸行きを実現させるために、正助はじめ皆が金を工面する。
正助は郷中の仲間たちに吉之介を江戸に行かせるために金をかき集めるように頼んだ。そして、正助は以前、吉之介が父と百両を借りに行った豪商、板垣与三次に三十両を貸してくれるように頼み込んだ。しかし、板垣はまずは借りた百両を返してから来るのが筋だろう、と取り合わなかった。
正助は土間に降り、頭を土間に擦りつけて言った。
「吉之介というのは太い男です。自分のためだけでなく、お百姓のため、おなごのためにも、惜しまず命をかける、こんな自分のためにも命がけで。吉之介さんではなく、私に三十両を貸してください。自分の命にかけて必ずお返ししますので」
その様子を見ていた板垣は、友思いの正助の姿に打たれ、五両を差し出し、吉之介の餞別だと言った。
「大久保様と同じく、私もなんだか西郷吉之助様が好きでございます」
正助は板垣に熱く礼を言った。
西郷家では、やっとのことで集めた金を数えていたが、それは三十両には遠く及ばなかった。そこに正助が板垣からの餞別の五両、そして郷中の皆からかき集めた六両を持って現れた。二十両あれば、なんとか江戸へ向かうことができる金額だった。
篤姫の護衛から帰宅した吉之介を正助は待ち構えていた。皆が集めた二十両を吉之介に渡し、これがあれば江戸に行ける、と言った。そして、吉之介が落としたあの紙を渡した。
「斉彬様と一緒に江戸に行け。俺にもう一発殴られたかとか?」
吉之介の江戸行きが決まった直後、須賀が父と一緒に離縁を申し出る。
吉之介は正助に頭を下げた。扉の向こうでは西郷家の人々が皆それを聞いていた。皆、吉之介の江戸行きを願っていた。
ところが、吉之介を尋ねて須賀と父がやってきた。須賀の父は吉之介に頭を下げて須賀と離縁してくれと言った。
「おいはおはんに惚れて須賀を嫁にやったが、これはおはんの嫁には相応しくない未熟者じゃ。須賀はこの家の嫁になったわけで、子守になったわけではないと言ってる。おまけに貧乏は嫌だとワガママを言ってる。おはんが江戸に行くなら家に戻る、離縁すると言ってる。我が娘ながら、我儘が極まって親の私も呆れている。こんな我儘娘の事は忘れて、心置きなく江戸に行ってくれ。これはせめてもの餞別じゃ」
そう言って、懐から金を出した須賀に父に受け取れない、と吉之介。
しかし、須賀は言った。
「これは言わば手切れ金です。これできれいさっぱり、夫婦の縁を切りましょう。江戸でもどこでも行って、勝手に出世してください。あああ、せいせいした。短い間でしたが、お世話になりました。それでは」
吉之介は須賀の本当に気持ちがわかっていた。須賀は吉之介を江戸に行かせるために身を引いたのだった。
そう言って須賀はさっさと西郷家を後にした。
吉之介はその包みを見て、須賀親子が去っていくのを見守りながら呟いた。
「ありがとな....」
須賀は父と帰りすがら、父は声をかけた。
「須賀、これで良かったのか?吉之介さんは薩摩一の婿じゃと思っていたが、お前にはあの男の良さがわからなかったか」
「私は、あんなやさしい男は見たことがありません。やさしくて、暖かくて」と須賀。
「それでは、なんで離縁など?」と父は驚いた。
「優しすぎるのです。一緒にいたら、離れられなくなります。江戸に行くな、と引き止めてしまいます。あの人のやさしさは自分の身を捨てて相手の気持ちになってしまう。こんなひねくれた私の気持ちも私もわかってくれて、もう十分でございます」須賀は言った。
「それでこちらから離縁を申し出て、手切れ金と一緒に江戸にやってやったのか?」と父。
「日本一の婿殿をこちらから離縁してやりました」
そういって、須賀は泣くのだった。
そして吉之介は江戸に晴れて旅立つことになる。
そして年が明け、安政元年一月二十一日、吉之介が江戸に経つ日がやってきた。家族や郷中のものたち、正助ら皆が吉之介を見送った。吉之介は皆のお陰で江戸に行けることになった、と礼を言った。
「皆が居てくれて、本当に良かった。俺は幸せものじゃ」
吉二郎が吉之介の代わりに一家の主として頑張ることになった。文を必ず送ると言う吉之介に正助は言った。
「吉之介の文など待たん。おいもすぐに後を追いかけます」
そして吉之介は家を出た。途中、桜島が見えた。吉之介は桜島に向かって言った。
「行ってくるで!」
(第8回終わり。つづく)
さるぼぼ母の感想
無愛想で我儘な嫁である須賀(橋本愛)がどのように不吉なのか楽しみにしていた前回でしたが、須賀は普通に貧乏な西郷家を切り盛りしていたようです。そして、そんな須賀に対して、吉之介は不満の表情ひとつ見せず、いつもやさしく接していました。
橋本愛さんの能面のような仏頂面はなかなか似合っていて、まあ、ユイちゃんの時も似たような無愛想さが際立っていましたが、その無愛想ゆえに吉之介を本当は愛していたことがわかった最後のシーンの涙は感動的でしたね。
不吉で我儘で無愛想な嫁である須賀が本当は吉之介を深く愛していたことは、誰にも知られず、最後の最後に父親にだけ知らされたわけですが、このドラマのテーマである「男にも女にも誰にもモテる男」である西郷どんへの愛し方を描いた回でもありました。
ああ、こういう風に西郷どんはいろんな人にいろんな愛し方をされていくんだな、とちょっとこのドラマのテーマが見えてきた感じはします。それが面白いかどうかは、まだわからないんですけどね。
ペリーの来港で日本が開国を迫られる事態になり、斉彬は薩摩に政治のアドバンテージを採るための策を実行します。すなわち、篤姫を江戸に送り込み、将軍の妻とすることになるわけです。大河ドラマの「篤姫」では薩摩の策略の一端としての篤姫の存在を強調してはいませんでしたが。
篤姫は篤姫で西郷を寵愛するのかもしれません。それはまた、愛とは別なのかもしれませんが。
ということで、次回はいよいよ江戸ですね。ホームドラマから少し歴史ドラマへ舞台も移ってきますので、次回も楽しみに見ていきたいと思います。
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