さるぼぼ母です。
大河ドラマ「西郷どん」第9回「江戸のヒー様」のあらすじと感想をご紹介します。
*詳細なネタバレが含まれますのでご注意ください
斉彬の伴で江戸に着いた吉之介の藩邸での生活が始まった。
薩摩を発った西郷吉之助(鈴木亮平)は、島津斉彬(渡辺謙)の伴として江戸へ向かった。斉彬公の近くで働くことができると思うだけで、吉之介の胸は踊るのだった。
薩摩を発って45日、通常よりも6日早く吉之介一行は江戸に到着した。吉之介の江戸での生活が幕開けすることになった。
江戸・芝にある薩摩藩上屋敷。藩主斉彬とその家族を筆頭に、1000人近い薩摩藩士が働いていた。藩邸に着くと組頭である迫田友之進が薩摩から来た新人たちに厳しい指導を行っていた。吉之介が迫田に呼ばれて名前を名乗ると、迫田は吉之介が御前相撲で優勝し、斉彬を投げ飛ばしたことも知っていた。殿の傍で働きたいと口にする吉之介を、迫田は殿の目に触れることさえ許されない、ただの三十八番だ、と言い渡されるのだった。
迫田は、薩摩藩士たちが江戸の近隣でこんな戯れ歌にされて噂されていたことを持ち出し、さらに厳しくするのだった。
飯盛りを 夜っぴき 寝かせぬ くつわ虫そのくせに 花は紅 ものはぶし
これは女郎を一晩中寝かせず、その癖金払いが悪い薩摩侍、という意味である。薩摩藩の江戸藩邸の規則は本当に厳しかった。
吉之介が藩邸で割り当てられた自分の部屋に入り、くつろごうとすると、先に江戸に来ていた郷中の仲間である大山格之助(北村有起哉)と有村俊斎(高橋光臣)が突然現れて吉之介を出迎えた。俊斎は吉之介と同室、大山も下の部屋だった。同室吉之介も二人との再会を喜びあった。
ペリーに開港を迫られ、幕府は井伊直弼に押される形で下田・函館の二港を開港する。
江戸城。斉彬はさっそく老中阿部正弘(藤木直人)に会い、横浜に現れたペリー率いる黒船が来港し、蒸気船のための資材の調達に応じて、幕府が下田・函館の二港を開いたことを斉彬はすでに知っていた。
阿部はその時、前水戸藩主である徳川斉昭(伊武雅刀)がこれまで同様、打ち払うべきだと述べたのに対し、彦根藩主である井伊直弼(佐野史郎)が本当に戦になれば勝てないのではと言い出し、勝てる証がないのであれば開国を受け入れることを提案したし、その場の流れが変わったことを語った。
時の十三代将軍徳川家定(又吉直樹)は、井伊直弼に問いかけられても、畳の上に落ちた豆を皆の前で拾って食べるような奇行を行った。そのまま、協議は一気に開国になってしまった、と阿部は言った。
それを聞いて斉彬はこのまま準備もせずに開国してしまえば、中国がイギリスにやられたのと同じ状況になりかねない、なんとかするべきだ、と主張した。しかし、それには将軍家定があの様子ではどうにもならない。
斉彬はかねてからの計画を早く実行に移すべきと阿部に伝えた。将軍の座にはもっと相応しい人物になってもらい、この一大事を切り抜ける手腕を持ったものに政治をしてほしい、そう斉彬は言うのだった。
「急がねばなりません。例の件」斉彬は言った。
薩摩藩上屋敷に吉之介よりも早く来ていた篤姫(北川景子)は、斉彬の嫡男虎寿丸と仲睦まじく過ごしていた。相撲をしようと篤姫を急き立てる虎寿丸を見て、篤姫は吉之介の事を思い出した。そうだ、吉之介も江戸に来ており、この藩邸のどこかに居るはずだ、と。
そこに現れた斉彬に篤姫は吉之介の事を根掘り葉掘り聞いた。篤姫の明るい様子を見ながら、徳川の御代所が務まるのか、斉彬は心配になるのだった。
吉之介は品川宿で、薩摩で助けた農家の娘ふきと再会する。
吉之介は大山と俊斎に飯を食わせると騙されて、品川宿にある女性が酌をするような店に連れて行かれる。遊ぶような金はない、と怒った吉之介が部屋を飛び出した時に、ぶつかった女性が吉之介の名を知っていた。
「間違えたらごめんなさい。お侍さん、もしかして、西郷吉之介様ではございませんか?」
驚いた吉之介が誰かと尋ねると、彼女は昔、吉之介が助けようとして売られていった佐古村の農家の娘・ふき(高梨臨)だったのだ。美しくなって見違えたふきは、下関から京都、そして江戸に売られて来たというのだった。薩摩で父や母、弟と別れた時の事に比べれば、大した苦労ではない、とふきは笑ったが、吉之介がふきの母が彼女が作ったお金で薬を買って、幸せだと感謝しながら死んだことを聞いて、涙ぐむのだった。
ふきはおよし、と呼ばれていたが、彼女を贔屓にしている「ヒー様」と呼ばれる男(松田翔太)がふきを呼びに来た。ヒー様は似顔絵を女性たちに描いたりして皆と戯れていた。
ふきを懇意にしている「ヒー様」と呼ばれる謎の遊び人風の男と出会う。
遊び人風のヒー様にふきが吉之介の似顔絵を描いてほしいというと、ヒー様は男は描きたくないという。ふきは田舎の父が絵だとわかるだろうと頼んだのだったが、ヒー様が描いた吉之介は、牛のように描かれていた。
「およし、お前は貧乏が嫌いだろう。あいつは一生貧乏だ。見ろ、嘘のつけない目をしている」とヒー様は吉之介の目を見て言った。
「では、ヒー様がお金持ちなのは嘘を付いているからですか」とふき。
その時、ふきの同僚のタマ(田中道子)に相手をしろ、と男たちが現れた。相手をしないなら金を返せ、と言う男たちにヒー様が金を投げると、男たちはなおも乱暴を働こうとした。ヒー様はその狼藉者たちを吉之介たちに任せて、一人まんまとその場を抜け出したのだった。
吉之介たちはその場で男たちと乱闘になり、藩邸に帰宅したのは門限をとうに過ぎた頃だった。慣れた様子で見張りの目を盗んで部屋に戻った大山と俊斎に続こうとした吉之介だったが、迫田に見つかってしまう。
藩邸の庭方を命じられた吉之介は、来る日も来る日も庭を掃除することになる。
翌日、門限を破った罰として、吉之介は掃除を申し付けられる。その日から来る日も来る日も掃除を命じられてしまう。何のために借金までして江戸に来たのか、斉彬の顔を見ることもできない、と吉之介は落胆するのだった。
来る日も来る日も掃除をしていた吉之介の元に、ある日斉彬の側近である山田為久(徳井優)が現れた。自分について来い、という山田の後に続くと、今度は斉彬が住んでいる藩邸に連れて行かれた。
「西郷吉之助。お庭方を命じる」と山田。
藩邸の庭方を命じられた吉之介は薩摩にいる大久保正助(瑛太)にその様子を書き綴った手紙を送った。江戸まで行ってなぜ庭を、と訝る家族だったが、斉彬の身辺警護も勤めているのだと正助は言った。しかし、正助は自分がこのまま薩摩で埋もれてしまうのではないかと焦るのだった。
庭方を拝命した吉之介は来る日も来る日も庭掃除に励んでいた。しかし、斉彬が姿を表わすことはなかった。ある日、吉之介がいつものように泥だらけになって庭を掃除し終わった時、声がした。
「西郷」斉彬だった。
斉彬から小石川の水戸藩邸に書状を届けるよう命じられ、命にかけて斉彬の手となり足となることを誓う。
斉彬が江戸には慣れたか、と尋ねると、吉之介は命をかけて庭の手入れをしていると言う。斉彬は言った。
「小石川にある水戸様のところに書状を届けてくれ。徳川御三家の水戸様だ」
そして、さらに続けた。
「命をかけて、と申したな。そなたの命わしにくれ。この先、危うき目に遭うかもしれぬ」と吉之介が立てかけた刀を見て言った。しかし、吉之介は斉彬の目を見ることができなかった。
「どうした?答えよ」という斉彬に対し、吉之介は言った。
「恥ずかしながら、幼き頃、右肩の健を切って、刀は使えません。この帯刀は飾りです。それでも、こうして生きてるのは、殿にお言葉をかけてもらったからです。死んではならぬ....」
斉彬にもその時の記憶が蘇ってきた。刀が持てない体になったと言って、死にたいと言っていた少年に、死んではならぬ。これからは侍が重い刀を二本も持って歩く時代は終わるんだ。
斉彬は吉之介の顔を覗き込んだ。
「あの時の小僧か。大きくなったな。メソメソと泣いていたやっせんぼだ」斉彬は楽しそうに笑った。
「はい。やっせんぼの小僧でございます。殿のためならこの生命、いつでも投げ出します。しかし、刀でお守りすることだけはできません。申し訳ございません」吉之介は頭を下げた。
斉彬は自分の刀を吉之介の前に突き出した。
「これは、雨の日も雪の日もいつでもここにおること。そしてわしの手となり足となること。それがお庭方の役割だ。そしてわしに代わって、人知れぬ秘密を知ること、その秘密を守れぬ時は、これを使え。受けるか?」
「命に替えてもお引き受け致します」吉之介は刀を受け取った。
水戸藩邸で徳川斉昭に渡した書状を破られ、水戸藩が井伊直弼と対立していること知る。
吉之介は刀を腰に刺し、小石川の水戸藩に向かった。紀尾井坂を通って辿り着いた水戸藩屋敷で、徳川斉昭に斉彬からの書状を渡すために待っていた。先の水戸藩主で10年も前に隠居したにもかかわらず、徳川斉昭は幕府内で絶大な影響力を持っていた。
徳川斉昭は、吉之介が斉彬から預かった書状を目の前で粉々に破いて屋敷の二階から捨てた。帰れという斉昭に吉之介は食ってかかった。
「なぜ、殿の書状を目の前で破ったのか理由を聞かねば帰れません。自分の恥はわが殿の恥」吉之介が言うと、斉昭は耳元に来て言った。
「あの書状に何が書いてあるか知ってるか?幕府の悪口、つまり徳川の悪口じゃ。それを破ったということは、島津殿の思いを心得たということだ」斉昭は笑いながら言った。
しかし、吉之介はなぜ徳川御三家の水戸様に斉彬が徳川幕府の悪口を書いた書状を送るのかがわからず、混乱してその理由を尋ねた。斉昭はここに来る前に吉之介が通ってきた紀尾井坂の話をし始めた。
「徳川の御三家の集まるべき場所であるのであれば、紀伊・尾張・水戸の御三家、つまり紀尾井坂ではなく、紀尾水坂であってもよいはずだ」
「井」とはすなわち、彦根藩主井伊直弼の事だった。井伊直弼はこの国難の時にも己の勢力を拡大することだけを第一に考えている、と斉昭は井伊直弼を罵った。
斉昭の息子一橋慶喜は、なんとあのヒー様だということに気がつく。
その時、斉昭の息子である一橋家当主一橋慶喜(松田翔太)が現れて言った。
「父上、紀尾水坂にならなかったのは、当家が幕府に煙たがられているからこそ。薩摩藩主が当家にそのような書状を送ったのも、それを知ってのこと。いずれは、幕府を倒そうとでも思っているのではないでしょうか」
それを聞いて斉昭もさすがに息子の言動を行き過ぎだと戒めたが、慶喜は続けた。
「西郷とやら。父上の申すこと、鵜呑みにしてはならぬぞ」と笑ったその顔を見ると、なんとあのヒー様ではないか。吉之介が品川宿で会ったあのヒー様ではないですか、と言うと、慶喜は人違いだと即座に否定し、その場を後にした。
これが、徳川家最後の将軍となる一橋慶喜と吉之介の最初の出会いだった。
(第9回終わり。続く)
さるぼぼ母の感想
今回からやっと江戸に舞台が移ります。江戸で島津斉彬の忠臣として登用される西郷隆盛の出世を描き始めた回になるのでしょうか。田舎の青い空と緑とは一変して、江戸のきらびやかで喧騒に溢れた様子が描かれます。
慌ただしい描写の中で、あの農家の少女ふきとの再会があります。ふきを演じた柿原りんかさんがあまりに上手だったので、彼女の再登場を願っていたんですが、当たり前、成長したふきは別の女優さんが演じてましたね。高梨臨さんもなかなか雰囲気があって良い感じですね。
それより、謎の遊び人ヒー様として登場した松田翔太さんは、もしかして唯一のイケメン?(笑)でしょうか。さらに江戸幕府の大悪人として描かれる井伊直弼という癖のある役を演じたのが佐野史郎さん。大好きな役者さんが続々と登場してうれしい回となりました。
それにしても、ヒー様は徳川幕府最後の将軍となる徳川慶喜となる一橋慶喜だったんですね。頭が切れて、才覚もあり、吉之介と並々ならぬ関係となっていくのを示唆したエピソード、ワクワクしました。
そして、斉彬の井伊直弼の開国政策に対抗する切り札として、現将軍であり、少し頭が足りない将軍徳川家定を演じているのが又吉直樹さん。いや、髪の毛がないと全然分からなかったですが、どんな面白い演技を見せてくれるのでしょうか。
そして、その家定に斉彬に政略結婚させられる篤姫がどのように斉彬と吉之介に関わっていくのでしょうか。歴史の流れにいよいよ乗り始めた西郷隆盛のよく知られた人生。どのように描かれていくのでしょうか。
楽しみになってきました。
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